リードユーザー法とは?製品をヒットさせるカギを握る

リードユーザー 解説

現代では、これまで主流であった企業から消費者へ価値を提供するプロダクトアウト形式の製品開発に加えて、消費者が画期的な製品を開発したり、既存製品を改良する時代がやってきました。

これを「ユーザーイノベーション」と呼びます。ユーザーイノベーションが注目を集める時代において、日本人口の3.7%を占めるとされているリードユーザーがイノベーションを起こすカギを握っています。リードユーザーを意識したマーケティングを行う事で、自社製品がヒットする確率がグンと高まります。

そこで、今回の記事ではリードユーザー法に焦点をあてて解説をしていきます。

    目次

リードユーザーとは

リードユーザーとは、製品サービスが広く普及するよりも前にニーズを察知し、自らが抱えるニーズを解消するために様々な工夫を施すユーザーを指します。

そのため、企業からは製品開発に大きく貢献する存在として注目を集めています。彼らは、他のユーザーよりもニーズを察知する能力が高いため、企業と共に製品開発に携わる事もあります。

実際に、食品用ラップやポケベルはユーザーの声から誕生した製品です。このように、他社よりも先発してヒット商品を生み出す上でリードユーザーは大切な消費者層であると言えるでしょう。しかし、日本においてリードユーザーの割合は3.7%とされており、大勢の注目を集める情報発信や口コミによる製品サービスの拡散には不向きな消費者層とされています。

リードユーザーの種類

リードユーザーは2種類あります。

1つは、他の消費者よりもトレンドの先端に位置して、いち早く既存の製品サービスに不満を感じ、ニーズを抱える「先進性」を持つリードユーザーです。もう1つはニーズを解決する事により、高い便益が得られると考える「高便益期待」を抱えるリードユーザーです。

参考:リードユーザーとしての消費者の特徴に関するサーベイによる実証研究|本條 晴一郎

質の高いリードユーザーの見つけ方

イノベーションに繋がるアイデアを有した、質の高いリードユーザーを見つける方法は「クラウドソーシング法」と「リードユーザー法」の2つがあります。

「クラウドソーシング法」では、インターネットで募集する方法です。これにより、短期間で多くのアイデアを集めることが可能です。しかし、多くのアイデアが集まるがゆえに、イノベーションを起こすリードユーザーを見つける事は困難です。

対して、「リードユーザー法」ではアイデアを持つユーザーを個別に探していきます。この方法では、イノベーションに繋がるアイデアを持つユーザーを個別に深堀するため、確実にリードユーザーにたどり着くことが出来ます。しかし、時間的コストや金銭的コストが多くかかるデメリットもあります。

リードユーザーが注目を集める理由

現代において、リードユーザーが注目を集めている理由は大きく分けて2つあります。

消費者の役割の変化

従来の社会では、マスマーケティングにより皆が同じ製品サービスを利用していました。しかし、ITの発展に伴い消費者が検索エンジンやSNSで気になる製品サービスの情報を簡単に入手できるようになった今、SNSなどを通じて消費者が何かをバズらせ市場の創出や拡大を起こす「ユーザーイノベーション」が頻発するようになったのです。

このような流れにおいて、企業は消費者を単なる価値の消費者と位置付けるのではなく、共に価値を共創するパートナーとして捉え始めました。そして、ニーズをいち早く察知するリードユーザーと手を組み製品開発を共に行う傾向が多くなったのです。

顧客経験価値の重視

これまでは「価値は製品サービスに宿る」とされていましたが、現代では「価値は顧客経験が土台にある」と見なす考えが普及しつつあります。

つまり、企業から顧客への一方的なコミュニケーションではなく、企業と消費者の双方向コミュニケーションにより、製品サービスの価値向上を求める傾向が高まっているのです。こうした流れに乗じて、企業が消費者と共に製品開発を行う際に、リードユーザーを重宝するようになりました。

リードユーザー法(リードユーザープロセス)とは

リードユーザープロセス(リードユーザー法)

マサチューセッツ工科大学のエリック・ヒッペルは、イノベーションの民主化を土台にリードユーザー法(リードユーザープロセス)を提唱しました。

彼は長年、「イノベーションの起点となるのはユーザーである」と主張していましたが、その主張が「顧客の声に耳を傾ける行為」と同一視されていたため消費者に耳を傾けても革新的なアイデアは望めないと軽視されていました。

この態度に反する形で、ヒッペルはユーザー起点で製品開発に大躍進をもたらす手法であるリードユーザー・プロセスを提唱しました。この手法では、開発サイドはリードユーザーに焦点を当てて、ニーズやその解決策に関するヒアリングを通じて、イノベーションに繋がるアイデアを得られるとしました。リードユーザー・プロセスは4つの段階を得てリードユーザーの調査を行います。

第1段階:ステークホルダーの巻き込み

イノベーションと聞くと、破壊的イノベーションを創造する方も多いかもしれませんが、実はイノベーションの種類は様々です。そのため、ターゲット市場や利害関係者がどのような種類のイノベーションや、どのレベル感でのイノベーションを期待しているのかを見極めるようにしましょう。イノベーションの種類については破壊的イノベーションの事例や起こし方を分かりやすく解説の記事をご覧ください。

第2段階:トレンドの見極め

リードユーザーは潜在ニーズをいち早く察知する消費者層のため、開発したい製品に関する市場のトレンドを押さえておかなければなりません。また、トレンドだけでなく関連する領域についても調査しておく必要があります。ヒッペルは、トレンドの見極めには専門家の力を借りる事を勧めています。

第3段階:リードユーザーの特定

この段階では、ターゲット市場とその関連市場のリードユーザーを探し観察します。観察をして得た情報から、プロトタイプの開発に関するアイデアを決定し、プロトタイプに収益性があるか、自社の利害と一致するかを見極めます。

第4段階:ブレークスルーの創出

プロトタイプで設計した製品コンセプトをもとに、ワークショップを通じた議論で最終的な製品コンセプトを設計します。ワークショップは2~3日程で行われ、開発担当者や専門知識を有するリードユーザー、社内のマーケティング担当者と技術担当者から選抜されたメンバーで行います。

まとめ

従来の製品開発は、先進的なニーズを抱えるユーザーよりもターゲットの代表的回答者に耳を傾ける事で行われていました。しかし、時代の変遷に伴い、共創の考えが生まれる事によりリードユーザーに焦点を当てた製品開発が重視されるようになりました。

しかし、単にリードユーザーの意見を反映させるだけでは画期的なイノベーションは起こせません。大事なのは、起こしたいイノベーションとリードユーザーのアイデアの親和性がある事です。そのため、自社の目指す姿とリードユーザーの意見の整合性を確かめつつ新たな製品開発に取り組む事を常に意識しましょう。

 

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