ツァイガルニク効果とは?意味と事例を用いて解説

皆さんは、日常において様々な行動心理学が活用されていることをご存知でしょうか?

「人は第一印象が大事」なんて話も心理学が関係しています。
そんな心理学ですが、実はビジネスシーンでも広く応用されています。例えば、「交渉が上手い人は相手の注意を惹きつける」DTR法と呼ばれる小技を使っています。

部下の教育に限らず一部の学習塾では「期待を相手にかけるほど、期待をかけられた相手のパフォーマンスが向上する」ピグマリオン効果等も導入されています。

ビジネスシーンでは、この他にも多くの心理学が活かされて日々実践されています。今回は、その一例として完成した状態よりも未完成の状態に興味を持たせてしまう「ツァイガルニク効果」について、意味と事例を分かりやすく解説します。これは営業やマーケティング等、幅広く活用されている心理学ですので、是非この心理効果を活用して役立ててください。

    目次

ツァイガルニク効果とは

「ツァイガルニク効果」とは、物事が完了した状態よりも途中で中断した状態や挫折した状態の方がより記憶に残る心理現象です。別名を「サイガニック効果」「ゼイガルニク効果」ともいいます。

皆様も、学生時代にテストで正答した問題よりも誤答した問題の記憶の方が良く残っているのではないでしょうか。また、恋愛では振られた相手の事がしばらく忘れられない。そんな甘酸っぱい経験をした方もいらっしゃるのではないでしょうか。

上記のように、ツァイガルニク効果はビジネスに限らずテストや恋愛などの様々なシーンでも見ることが出来ます。

ツァイガルニク効果の語源

「ツァイガルニク効果」の語源は提唱者であるドイツのゲシュタルト心理学者「クルト・レヴィン」と旧ソビエト連邦の心理学者「ブルーマ・ゼイガルニク」にあります。

彼らは、次に説明する実験を通じて「ツァイガルニク効果」を証明しました。

ツァイガルニク効果の実験

「ツァイガルニク効果」の実証実験では以下の2グループに分かれて簡単な作業をいくつか行いました。

  • A:最後まで作業を行い次の作業に取り掛かる
  • B:途中で作業を中断し、次の作業に取り掛かる

全ての作業を行った後、被験者に「今までの作業の種類」を答えさせました。すると、軽作業を中断されたBの方がAの数倍も作業の種類を答えられました。

この結果から、物事は完了させた状態よりも中断された方が記憶に残りやすい事が実証されたのです。

ツァイガルニク効果の事例

ツァイガルニク効果は、日常生活の様々な場面で登場します。それぞれの具体例を見て更に理解を深めていきましょう。

仕事

仕事におけるツァイガルニク効果の例は以下の通りです。

  • 仕事の途中で優先度が高い別の仕事が急に舞い込み、中断仕事が気になって仕方ない
  • プレゼンの途中で「この大事な話は後程説明します。」と、言われ続きが気になってしまう。

どちらも、物事に対する理解を完全に出来ていないため気になってしまうという心理が生じています。

勉強

勉強におけるツァイガルニク効果の例は以下の通りです。

  • 勉強を中断せずにキリのよいところまで進めたくなる
  • 正答した問題よりも誤答した問題の方が気になる
  • テスト中に制限時間が来たため、問題の続きが気になる

上記のような現象を、学生時代に経験した方も多いのではないでしょうか。

恋愛

恋愛は、ツァイガルニク効果の説明時によく取り上げられる例の1つです。

  • 振られた相手の事がしばらく忘れられない

振られてしまった人は、恋愛が途中で終了したためツァイガルニク効果が発生します。その一方で、振った側の人は恋愛が完了もしくは元々始まっていないため、ツァイガルニク効果は発生しづらいです。

キャッチコピー

キャッチコピーでは、よくツァイガルニク効果が使用されています。試しに、下のキャッチコピー2つを読んでください。どちらが興味をそそられますか。

  • A:たった10秒!歯並びを改善させる矯正器具を紹介!
  • B:たった10秒!これをすれば歯並びが劇的に改善!

多くの人はBのキャッチコピーに興味をそそられます。何故なら、答えとなるベネフィットが隠されている為、情報が中途半端で続きが気になってしまうからです。

ツァイガルニク効果のメリット

ツァイガルニク効果を上手く活用すると、仕事において様々なメリットを得られます。具体的に、そのメリットについて以下で解説します。

①モチベーションの維持

作業ステータスが中断された状態の仕事があると、早くその仕事を終わらせたい気持ちに駆られます。そうして、仕事を惰性的に行うのではなく、メリハリについた働きで行うようになります。

また、中断した状態の仕事があると完了するまで一定の緊張が続きます。この状態も、ツァイガルニク効果によるモチベーション維持が起きていると言えるでしょう。

②生産性向上

仕事を中途半端に中断してしまうと「キリがよい部分までは仕事を終わらせたい」という心理に陥り、突然舞い込んだ仕事を早く終わらせようとします。

割り込んできた仕事の量や、大きさ、優先順位の程度にもよりますが、多くの場合生産性向上に繋がります。

③マーケティングへの活用

先ほどの事例でも紹介した通り、ツァイガルニク効果はキャッチコピー等のマーケティング領域でも効果を発揮します。

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詳しくはフリーミアムモデルとは?ポイントや事例を解説の記事をご覧ください。

ツァイガルニク効果のデメリット

ツァイガルニク効果は、メリットだけではなくデメリットもあります。ここでは、ツァイガルニク効果によるデメリットを3つ解説します。

①ストレスの原因となる

人によって、仕事を途中で中断した場合にストレスが溜まってしまうことがあります。特に、仕事への意識が高い人やストレス耐性が低い人、中断した仕事が多いほど感じるストレスは大きくなる傾向があります。

そのため、ツァイガルニク効果を他者へ与えたいという場合は相手の性格や特徴などを踏まえた上で適量の範囲で仕事を振るようにしましょう。

②モチベーション低下になりうる

仕事の作業ステータスが未完了の状態が続くと、仕事のモチベーション低下に繋がる恐れがあります。「ずっとあの仕事が終わらないからめんどくさくなってきた。」「大体いつも仕事が中断されるからこの程度でやっておけばいいや。」など、仕事を途中で意図的に止める社員が出てくる可能性があります。

そうならないように、こちらの想定時間内で相手が仕事を終えられない場合は、何に時間がかかったのかを話してもらい、適切な仕事量を与えるようにしてツァイガルニク効果を見直す必要があります。

③無駄な工数が増える場合がある

ツァイガルニク効果を仕事で応用すると、途中で作業を中断させる事になるため、再度その仕事を片付けようとした場合「どこまで手を付けたか。」「どの工数で進めていたか」を思い出しながら作業をする必要があります。

そのため、タスク管理を徹底し「この仕事を完了するには何が必要か」を理解させたうえで仕事に取り組む必要があります。

ツァイガルニク効果のまとめ

ツァイガルニク効果は、あえて未完了で物事を置いておくことにより、興味を惹かせる心理効果です。適度に情報を公開する事で、こちらに注意を引き、理解してもらう。これを上手く活用すると、大きなビジネス効果が得られるでしょう。

ただ、ツァイガルニク効果を狙う際の注意点も存在するため、「相手の立場や特徴、気質」もきちんと把握したうえで活用するようにしましょう。

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