破壊的イノベーションとは?起こし方や事例を徹底解説

破壊的イノベーション サムネ

破壊的イノベーションをご存知でしょうか。このイノベーションは近年、非常に注目されておりベンチャー企業を中心に起こされています。反対に、大手企業が破壊的イノベーションを起こすことは難しいと言われており、そこにはイノベーションのジレンマが存在します。ですが、これらの言葉を聞いてピンと来ない方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、既存の業界や産業構造を大きく転換し、既存企業を脅かす力を持つ破壊的イノベーションについて分かりやすく解説していきます。

    目次

破壊的イノベーションとは

これまで日本企業が得意にしてきた持続的イノベーションと対極に位置するイノベーション。それが破壊的イノベーションです。

持続的イノベーションとは自社の製品サービスやそれを創出する過程を改良していくことで性能を上げるイノベーションです。このイノベーションは業界・産業構造を改変する程の影響力を持たず企業レベルに留まります。

一方で、破壊的イノベーションは企業レベルに留まらず業界・産業構造を大きく改変する影響力を有しています。以下で、破壊的イノベーションの意味・特徴および事例について解説していきます。

破壊的イノベーションの意味

破壊的イノベーションとは消費者の求める価値レベルを低下させ、新たな価値基準を生み出すイノベーションです。大企業が得意とする持続的イノベーションが、製品サービスの機能を向上させる既存顧客に向けられているのに対して、破壊的イノベーションは全く新しい顧客に対して向けられたイノベーションなのです。

2種類の破壊的ノベーション

破壊的イノベーションは大きく分けて2種類あります。新市場型破壊的イノベーションとローエンド型破壊的イノベーションです。それぞれの違いについて、以下で具体的に解説していきます。

①新市場型破壊的イノベーション

新市場型は文字通り新たな市場を生み出し業界に革新を与えるイノベーションです。この類のイノベーションはベンチャー企業によく見られます。競走の激しいレッドオーシャンよりもまだ競合の少ないブルーオーシャンで戦う意図を持つ企業によって生み出されることが多いです。新市場型破壊的イノベーションの事例の1つにルンバがあります。これまでは、掃除機を用いて人力で掃除していたのに対して、ルンバが登場したことで無人での掃除を可能にしたのです。

ルンバがヒットしたことで、ルンバシリーズが登場し新たな市場が確立されました。これこそ、まさに新市場型破壊的イノベーションの典型例であると言えるでしょう。

②ローエンド型破壊的イノベーション

ローエンド型は持続的イノベーションにより発展した既存の製品サービスよりも低価格で使い勝手の良い製品サービスを生み出すイノベーションです。従って、持続的イノベーションにより発展してきた大手企業であればある程、このイノベーションは脅威となるのです。

ローエンド型破壊的イノベーションの事例はLCC(格安航空会社)です。LCCが登場する以前の航空業界は、機内サービスや安全性・フライト時間の要素で差別化を図り競争をしていました。そのため、航空券の価格が高騰し飛行機に乗りたくても価格が原因で利用出来なかった消費者も多くいました。しかし、無料サービスの廃止や一部サービスを有料化したLCCが登場したことで、これまでに飛行機を利用出来なかった多くの消費者の飛行機利用が可能となりました。

破壊的イノベーションの特徴

破壊的イノベーションには新市場型・ローエンド型イノベーションに共通した特徴があります。以下で2つの特徴について解説します。

①産業構造を変化させる

破壊的イノベーションは既存の製品サービスを圧倒的に凌駕した新たな製品サービスを業界に投入するモデルです。従って、これまでに無かった価値基準が誕生します。これにより、大企業を始めとして多くの企業が模倣化による追随に乗り出します。この一覧の動きのモデルは破壊的イノベーションにより生まれた新たな価値基準であるため、業界全体にインパクトを与え産業構造を変化させるのです。

前述したLCCの例では、航空業界内に新たに価格という価値基準を生み、サービスの質や安全性以外の競争要因をもたらしました。LCCに追随する形で、その他の大手航空会社も消費者を囲おうと格安の航空券販売に乗り出すなど、産業構造を大きく変化しました。

②大企業には脅威となる

新市場型はブルーオーシャンを切り開き、ローエンド型は既存製品よりも低価格かつ手頃な製品サービスを市場に投下します。これまで持続的イノベーションにより高い地位を築いてきた企業は、当然それらの製品サービスの売上に頼ってきた節があります。しかし、大企業が勝負する業界において破壊的イノベーションがもたらされるとこれまでの価値基準が通用しなくなり、売れ筋商品を使用していた顧客が新たな製品サービスに乗り換えることになります。そうすると、大企業は持続的イノベーションにより製品サービスをアップデートしてきた意味が無くなります。後発の製品サービスに顧客を奪われてしまうからです。

破壊的イノベーションとイノベーションのジレンマ

破壊的イノベーションは既存プレーヤーではなく新規参入者によってもたらされることが多いです。また、既存プレーヤーは破壊的イノベーションに素早く対応する事が難しいとされています。それは何故でしょうか。実は、この背景にイノベーションのジレンマが存在します。

イノベーションのジレンマとは、既存顧客のニーズに耳を傾けすぎるあまり、自社の製品を改良してアップデートする持続的イノベーションに頼る事で、かえって市場シェアを失う現象を指します。

アメリカの経営学者であるクリステンセン氏は、以下で紹介するイノベーションのジレンマに陥る原因3つを提唱しました。

大企業による破壊的技術への無関心

既存市場で多くのシェアを築いている企業は既存技術に改良を重ねて成功したため、破壊的技術には関心が低い事にあります。破壊的技術を導入すると、これまで自社が強みとしていた技術を活かせる可能性が低下し、製品の性能も低下してしまうため、大企業であればあるほど破壊的技術には関心を示さなくなります。

これを回避するためには両利きの経営が有効です。両利きの経営については両利きの経営とは何かを事例を踏まえて徹底解説で紹介していますので、この記事を読み終えた後にご覧ください。

高い技術と顧客ニーズの乖離

いつも高い技術が顧客ニーズを充足するとは限りません。現代における開発技術の進歩は私たちの創造を遥かに超え、必要とする以上の性能が付与された製品を生み出せます。故に、業界のリーディングカンパニーは市場の需要を必要以上に上回る製品開発に励んでしまいます。そうすると、販売価格は高騰し、消費者は求めている性能に見合うだけの値段の製品を購入しはじめます。その隙に、業界平均では性能が低くても消費者のニーズを満たす新技術を保有する新規参入者にシェアを奪われてしまうのです。

新市場の過小評価

破壊的イノベーションにより創出された新市場は未熟で収益性が低いです。したがって、成熟した既存市場で成功を収めている企業は、収益性が低く市場が小さい新興市場にわざわざ参入せずとも、既存市場でビジネスする方が大きな収益を見込めます。そのため、破壊的技術により新市場が誕生したとしても、進んで参入する事は無く様子を見ます。そして気づいた頃にはタイミングが遅く、自社のシェアを奪われているのです。

破壊的イノベーションを起こし方

破壊的イノベーションは偶発的に起こるものではありません。
それを起こすためは必要なステップを踏む必要がありのです。ここでは、破壊的イノベーションはどのようにして起こすのかを、無消費の探索,潜在顧客へのアプローチ,最低限のニーズ把握の3つの観点から紹介していきます。

無消費の探索

破壊的イノベーションを起こすには無消費を探すことが有効です。ここでいう無消費とは、製品サービスが何かしらの制約により使用されていない状態を指します。この無消費を分解すると1.時間2.資力3.アクセス4.スキルに分かれます。これらの要素を解消する事が、破壊的イノベーションにを起こす事に繋がるでしょう。

1.時間の制約
時間の制約は製品サービスを利用する際に時間や面倒がかかることを意味します。サービスであれば、利用するまでの待ち時間や接客に対する応答時間などが挙げられます。身近な例であれば、テレビゲームをするのに時間がかかっていたのを解消するために、隙間時間で遊べるスマホゲームが登場したことで時間の制約を無くし多くの顧客を創出しました。

2.資力の制約
資力の制約は欲しい製品サービスが高いが故に買えないことを意味します。先にに紹介したLCCの例では、資力が乏しく飛行機を利用出来ない消費者に対して格安航空で搭乗案内する事により、多くの顧客を確保しました。これこそ、まさに資力の制約を解消して破壊的イノベーションをもたらした事例と呼べるでしょう。

3.アクセスの制約
アクセスの制約は特定の地域や条件により自由に製品サービスを利用できないことを意味します。これを解消した事例として、携帯電話が挙げられます。これまでは、写真屋にいかないとフィルムを現像できなかったのが、携帯電話1つで写真を現像できるようになりました。また、音楽を聴くのにもCD屋まで足を運び購入しなければならなかったのを、電子版で購入してサウンドを聞けることを可能にしました。アクセスの制約はITの発展により、今後も解消されていくでしょう。

4.スキルの制約
スキルの制約は使用したい製品サービスの難易度が高いがために使用できないことを意味します。大抵の場合、その分野に詳しい人物の手助けが必要なため、消費者の利用障壁が高くなります。近年では、専門領域に特化したフリーランスなどに仕事をアウトソーシング出来る「クラウドソーシング」や「ランサーズ」のようなプラットフォームが誕生し、スキルの制約で苦しむ消費者の悩みを解消しています。

既存顧客に捉われずに潜在層へアプローチする

イノベーションのジレンマでも見た通り、既存企業が破壊的イノベーションを起こせない/乗り遅れるには既存顧客を中心に市場を捉えすぎていることが原因でした。そのため、破壊的イノベーションを起こすには既存顧客以外にも目を向なければなりません。

そして、小さな市場でも潜在顧客が自社の優良顧客となる可能性があるかをしっかりと見極める必要があります。したがって、既存の概念に捉われずに常に新鮮な視点を持ち潜在顧客にもアプローチするべきなのです。

参考:グロービス経営大学院/探索型リサーチ

最低限のニーズ把握

破壊的イノベーションによって生まれた製品サービスは、既存プレーヤーの提供するモノと比較すると低い性能のため、あまり受け入れられません。しかし、性能が低くても一定のニーズを満たし、それに見合った価格であればそれを受容する消費者は一定数存在します。そして、新市場における顧客の改善点や要望に耳を傾けアップデートする事で、既存プレーヤーの提供品と同等もしくはそれ以上の製品サービスを低価格かつ低コストで提供できるのです。

逆に、いくら性能が高くても顧客がそれを理解できなければ利用される事はありません。消費者の必要としない技術に投資した結果、製造コストが高くなり販売価格が上がってもそれが伝わらなければ、消費者は他社の低価格で自身の抱えるニーズを満たす製品を利用するでしょう。

破壊的イノベーションの事例

ここまで破壊的イノベーションについて1連の解説をしてきました。では、より理解度を増すためにも、最後に破壊的イノベーションにより業界に一石を投じ、業界構造を変えた破壊的イノベーションの事例を見ていきましょう。

iPhone:ガラケーのシェアを奪取

iPhone 画像

恐らくこの記事をiPhoneで読まれている方もいるのではないでしょうか??実は、このiPhoneこそ破壊的イノベーションの代名詞にふさわしい製品です。

iPhoneが誕生する以前は日本ではガラパゴス携帯(通称:ガラケー)が主流の携帯電話でした。ガラケーは遠方の知り合いと即時性のあるコミュニ―ケーションを取れる事で人気を博していました。しかし、このガラケーの機能に加え検索機能・高画質なカメラ機能・音楽再生機能を搭載したiPhoneが登場したことにより、一気にガラパゴス携帯産業は衰退産業へと姿を変えました。

これだけではありません。高画質な写真・動画を手ごろに撮影できる点でカメラ産業を破壊し、簡単にワード検索できる事からパソコン産業も破壊しました。この一連の流れにより、iPhoneはガラケーから市場のパイを奪取したのです。

Netflix:レンタルビデオ屋を衰退に追い込む

ネットフリックス 画像

皆様もご存じであろうNetflixは、誰でも必ず興味のあるコンテンツの動画を発見できる事を売りに今日も世界中で人気を博している動画配信サービスです。Netflixは映画やバラエティ番組など多種多様な作品を提供していますが、サブスクリプション型のダウンロードコンテンツであるため、店舗にビデオを置く必要が無いといった新しい価値基準を創出しました。

このビジネスモデルが誕生したことにより、消費者は実際にリアル店舗に足を運ぶ必要性が無くなったので、当然レンタルビデオ屋へ顧客の流入が途絶える形になりました。結果、それまでの大手レンタルビデオ屋(TSUTAYA)は大量の在庫を抱えることに加え、ビジネスモデルの転換を迫られているわけです。

任天堂:新たな価値観の創造

任天堂は、ゲーム市場における既存の価値観を次々に覆し破壊的イノベーションを何度も起こしています。ここでは、代表的な事例としてWiiを紹介していきます。Wiiが発売される以前は、Sonyの提供するPS2が人気を博していました。その流れを受けて、待望のPS3が発売されたものの、その売上は任天堂のWiiに劣る結果となりました。

任天堂の勝因は、これまで重視されていた性能を削り、家族で楽しめる簡易的なゲームをPS3よりも低価格で発売したことにあります。これにより、ゲームに馴染みが無かった人や子供のゲーム機を購入する決定権を持つ母親をも魅了したことで、売り上げを着々と増大させたわけです。

まとめ:破壊的イノベーションを起こすには情報が大事

破壊的イノベーションは、新興企業が起こす事が多く、大企業が起こせない背景にはイノベーションのジレンマがあります。しかし、既存市場も最初は小さな市場であり、成熟した市場へ変化する過程までに数々の競争があったのです。破壊的技術により創出された新市場が収益性を確保するのに適しているか否かを、短期ではなく長期で考えて参入を検討するようにしましょう。また、破壊的イノベーションを起こすには、自社顧客だけでなく潜在顧客の視点も取り入れた製品開発が大事になってくるのです。

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