ピグマリオン効果とは?具体例や教育における重要性について解説

近年、ビジネスや対人関係において心理学が活用される機会が増えてきました。この流れは、部下の育成や子育てにおいても同じことが言えます。
『叱るのではなく褒めて伸ばすできだ』と一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?これは、心理学の世界において正しいとされておりピグマリオン効果として知られています。
今回は、この『ピグマリオン効果』について意味と例をいくつか解説していきます。

    目次

ピグマリオン効果とは

ピグマリオン効果とは、周囲からポジティブな言葉をかけられると学習成績や仕事のパフォーマンスが向上する心理効果です。この効果の提唱者である、アメリカの教育心理学者:ロバート・ローゼンタールの名前になぞらえて「ローゼンタール効果」、「教師期待効果」とも呼ばれます。また、周囲からの前向きな発言や期待を受けるだけではなく、自分自身の発する前向きな発言や期待にも影響力があると考えられています。ピグマリオン効果は、教育現場や会社で活かされています。しかし、ピグマリオン効果は実験に再現性がないとの批判的な意見、自己学習の観点に欠ける、指導者の心構えとなるべき概念であるなどの意見があり、現在に至るまで議論が行われています。

ローゼンタールの実験

ここでは、ローゼンタールが実際に行った実験とその結果について簡単に解説していきます。
ローゼンタールは、ピグマリオン効果を証明するために、実際の教育現場において以下3つの実験を行いました。

  1. 「今後成績が伸びる児童を割り出す為のテスト」と称して知能テストを実施
  2. 実際のテスト結果ではなく、実験者が無作為に抽出した児童の名簿を、担任へ今後成績が伸びる児童であると伝達
  3. 担任は該当する生徒へ期待を込めて指導した結果、対象の児童はその期待通りに成績が向上した

この実験に対して、実際の教育現場を利用したことや、生徒の自己学習を加味できていないという視点が不足しているという批判も存在します。

加えて、ローゼンタールも「生徒とのつきあいが2週間以内の教師の場合は、91%の研究でピグマリオン効果が見られたが、2週間以上のつきあいがある教師では12%の研究でしか効果が見られなかった」と報告しています。

しかし、他者からの期待に応えようと奮闘する心理が存在し、褒めて伸ばす教育が今日に至るまで主流になりつつあることも事実です。

ピグマリオン効果の対義語:ゴーレム効果

前向きな発言や期待を込めて接される事で、パフォーマンスを向上させるピグマリオン効果とは反対の心理効果として「ゴーレム効果」が挙げられます。
ピグマリオン効果の提唱者と同じ、ロバート・ローゼンタールが提唱した心理効果であり、他者から期待されなくなることでパフォーマンスが低下するとされています。
ピグマリオン効果は正の連鎖を生み出す心理効果であるのに対して、ゴーレム効果は負の連鎖を生み出す心理効果と覚えると良いでしょう。

ピグマリオン効果の活用方法

ただ単に、期待や前向きな発言をかけているだけで良い方向へ物事が上手く進むとは限りません。当然、現状満足や自分の能力に驕る者も出てきます。そのような事象を避けるために、ここではピグマリオン効果を上手に活用して現場に活かす方法を紹介していきます。

  1. 裁量を与える
  2. 期待を必ず言葉で伝える
  3. 能力に応じて達成可能な課題を与える
  4. 褒めることでモチベーションを維持する
  5. 過剰な期待をかけない

①裁量を与える

これは、組織における部下の教育において大事な取り組みです。
部下に対して「期待している」と、声掛けをしても上司が指示した仕事をこなさせているだけでは本当に期待されていると部下は感じない場合があります。そのような事を避け、部下の成長を促すためにも裁量を与える必要はあります。具体的には「○○の範囲で」「予算○○万円以内の~~」と示して裁量を与える事をオススメします。

②期待を具体的に伝える

表面的に「期待しているよ。」と、伝えるだけではピグマリオン効果を最大限に発揮する事は出来ません。期待を具体的に伝える事で他者から評価されていると実感する事が出来るのです。

  • どのように成長しているかを伝え、どの部分に期待しているかを伝える。
  • 結果が上手くいかなくても過程に焦点を当てて褒める。

このように接する事で、期待をかけられた側は自分がどのように頑張るべきかの道が明確になり能動的に物事に取り組むようになります。

③能力に応じた課題を与えて自信を付けさせる

本人の能力以上の課題を与えたとこで、それを達成できなければ自信を失ってしまいます。また、簡単すぎる課題を与えてもこちらの期待を上回る成長に繋がりません。足し算の概念を理解していない子供に対して、掛け算を説明して解くようにと伝えても、元となる足し算を理解できていない為、正答率は悪いでしょう。この時、算数に対する苦手意識が芽生えると同時に、目の前の事象から目を逸らして意欲的に学習に取り組まなくなる可能性が生じます。

これは、仕事においても同様で捌ききれない量のタスクを与えたところで、結果は悪い方向へ転がるのは一目瞭然です。相手の能力に応じた課題を与えて期待をかけるのも指導者の立場にある人の1つの務めなのです。

④過剰な期待はしない

ピグマリオン効果を発揮させようとして、相手に過度な期待をかけすぎるのも良くありません。何故ならば、期待をかけられ過ぎた相手は大きなプレッシャーを感じ、かえってモチベーションの低下に繋がってしまう可能性があるからです。適切な期待のかけ方の指標として、下記の3つを意識してみると良いでしょう。

  1. 相手の性質
  2. 相手の置かれている立場・状況
  3. 相手の能力

これらを加味して適切な期待をかける事で、さらなる成長を導くことが可能となります。

⑤定期的に褒めてあげる

人間は、褒められることで肯定感が上がり頑張ろうとする生き物です。そのため、最初は褒めていたものの褒める習慣が無くなった際は「以前は褒めてもらえたのに、今では全く褒められなくなった。もしかして期待されなくなったのでは。」と、感じてしまいモチベーション低下に繋がるリスクがあります。そのような負の影響を避けるために、1週間に1回は相手の良いところを見つけて褒めてあげる等の工夫をするようにしましょう。また、叱って終わらせるのではなく「次からはこう出来ると良いね。」「君にはこのような良い部分があるのだから、この点を活かして次から取り組んではどうかな?」等、前向きな声掛けをしてあげる事も大きなプラス要素として働きます。

ピグマリオン効果の注意点

マネジメントにおいて、ピグマリオン効果を活用する際は注意点しなければならないポイントが存在します。それは相手を褒めすぎてしまう事です。

  • 現状満足
  • 怠慢

上記のような負の影響が見られることがあります。そのため、先の章で解説したポイントを押さえて上手にピグマリオン効果を発揮させていきましょう。中には、褒めすぎたとしても期待に応えくれる方もいらっしゃいますが、そうでない人も存在するのも事実です。しっかりと相手の性格や環境を見て褒めるようにしましょう。

ピグマリオン効果のまとめ

ピグマリオン効果とは、他者からの期待を受ける事で仕事や勉強などの成果が向上する心理効果を指します。しかし、期待のかけ方によっては負の影響をもたらす事もあるため、しっかりと相手の性格や環境を加味したうえで期待をかけるようにしましょう。

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