当たり前のことですが、消費者は購買活動をする時に自分の目的に合った商品を購入します。現代ではモノの消費が進み消費者ニーズが多様化しています。そのため、企業は消費者を一括りにまとめてマーケティングを行うのではなく、消費者ニーズを場合分けしてターゲットを絞ったうえで活動するようになりました。ここで重要になってくるのがSTP分析と呼ばれるフレームワークになります。今回はそのような企業のマーケティング活動において、基本中の基本となるSTP分析について分かりやすく解説していきます。
目次
STP分析とは
STP分析とは「Segmentation(セグメンテーション)」,「Targeting(ターゲティング)」,「Positioning(ポジショニング)」の3要素における頭文字を繋げたもので、各工程を行う中で自社の取るべき戦略を分析するフレームワークです。
分析の流れはセグメンテーション⇒ターゲティング⇒ポジショニングの順番で行います。
STP分析を行う事で、企業は自社が市場において誰をターゲットにし、どのような価値を与えていくのかを決定し戦略に活かしていくのです。
現代マーケティングの第一人者として知られているフィリップ・コトラー氏によりSTP分析は提唱され、欧米では広く導入おり、日本の企業でも導入されています。
STP分析の事例で有名なのが、ユニクロ・スターバックスコーヒーです。こちらは後半の記事で詳しく解説します。
STP分析は何故重要か
STP分析の重要性を考える前に時代を遡る必要があります。この分析が考案される以前の時代は、モノの消費は現代よりも進んでおらず、皆が同じような製品サービスを利用していました。しかし、文明の発達に伴い人々のモノのニーズが充足されるようになると消費のレベルが一段落上がります。精神の充足を求めるようになったのです。これまでは最低限のスペックで足りていたのが、足らなくなりそれ以上の機能やサービスを消費者は求めるようになりました。
このように消費者ニーズが多様化した現代において、企業は従来のマーケティングで消費者を一元的に捉える事が困難になりました。そこで、消費者をセグメンテーションし、ターゲティングを行った上で競合と自社を比較し、マーケティングを行うSTP分析が生まれたのです。これにより、企業の狙うべき層が明確化しその市場においてシェアを築くことが可能になるのです。この背景において、STP分析は重宝されています。
STP分析の方法
次に、STP分析のやり方について解説します。STP分析の順番通りS⇒T⇒Pの流れで分析を行っていきます。ここでは、各工程に焦点を当ててSTP分析を説明します。
Segmentation(セグメンテーション):市場の細分化
セグメンテーションとは、市場の細分化を意味します。この工程では、市場を全体から何かしらの属性に落とし込んでいきます。
人口を例に挙げると、男性と女性の属性に落とし込むことが出来ます。更に細かくすると、若年層,中年層,老年層の3つの属性に落とし込めます。このようにセグメンテーションにより細分化されたユーザー層をセグメントと呼びます。
セグメンテーションでは、主に以下の4つの変数を基に消費者の場合分けを行います。
・地理的変数:国,気候,人口密度など
・人口動態変数:年齢,性別,家族構成,所得水準など
・行動変数:購買パターン,購買頻度,製品知識など
・心理的変数:好み,ライフスタイル,社会階層
顧客ニーズが多様化する現代において、各々の抱えるニーズを明確にするためにこれらの変数を基にセグメンテーションを行うのです。
セグメンテーションの確実性を上げたい方はSegmentation(セグメンテーション)について徹底解説した記事をご覧ください。
Targeting(ターゲティング):標的ユーザー層の抽出
ターゲティングとは、セグメンテーションにより細分化されたセグメントのうち、どれを狙うのかを決める作業を指します。
この段階では、自社のブランドコンセプトなどを軸に標的となるセグメントを決定します。
高級ブランドが低価格で製品を販売しないのは、ブランドコンセプトによるものです。高所得者層をターゲットに高価格で高品質の製品を販売しているため、高所得者層をターゲットにしないのはあまり賢い戦略とはいえないでしょう。
ターゲットを絞る事で、自社の取るべきマーケティング戦略や製品開発に繋げることが可能になります。
ターゲティングについてより詳しく知りたい方はTargeting(ターゲティング)の正確性を上げるための記事を書いていますので併せてご覧ください。
Positioning(ポジショニング):立ち回り
ポジショニングとは、同じセグメント内での競合他社と比較した場合に自社がどの立ち位置に置かれているのかを明確にし、自社製品の独自性や付加価値をどこに見出すのかを決定する戦略を指します。
この段階では、自社製品と競合製品のどこに違いがあり魅力が生じているのかを消費者に分かりやすく提示する必要があります。
既に市場では製品が山ほど溢れかえっているため、新製品を市場に導入したとしてもその違いが分からなければ大きな売り上げは見込めないでしょう。
そのため、顧客視点でポジショニング戦略を行い製品開発を行う事が大切だと言えるでしょう。ポジショニングが差別化戦略に繋がり顧客ニーズを充足する事につながるのです。
ポジショニングはSTP分析における最後の砦です。ポジショニングについて徹底解説した記事を参照してSTP分析の成功率を上げましょう。
STP分析の活用法
STP分析は様々な戦略に活用する事が出来ます。
セグメンテーションを通じて消費者を細分化し、ターゲティングで標的となる消費者属性を明確化する事で、自社の取るべき戦略が具体化するのです。
さらに、ポジショニングで自社の立ち位置を明らかにする事で、より綿密な戦略が実現します。
以下が、STP分析を活用する事で実現可能になる戦略の例です。
市場戦略:市場における自社の戦略の方向性を位置づけする
ブランド戦略:自社ブランドの位置づけを明確化し、どの層を狙って自社製品をプロデュースしていくのかを決定する
製品戦略:競合との違いを明確にし消費者ニーズを充足する
コミュニケーション戦略:広告や施策を行う際に標的とする消費者を明確にしプロモーションを行う
キャンペーン戦略:ポイント還元を行う際にリピート顧客or新規顧客にアプローチするのかを考える
STP分析の事例:スターバックス
皆様もご存知のスターバックスはSTP分析の成功例としてよく挙げられます。
今回の記事ではSTP分析の事例としてスターバックスを挙げています。
それでは、早速スターバックスにおけるSTP分析の事例を見ていきましょう。
スターバックスのSegmentation(セグメンテーション)
スターバックスはSTP分析において利用顧客を年齢別にしてセグメント化しました。
10代後半~70代くらいまでの世代別に細分化し、さらに男女別に分けて顧客を考えていきました。
続いて、職業の観点でもセグメンテーションを行い、学生/会社員/公務員/自営業/ノマドワーカー/高齢者(退職者)に分類しました。
さらに細かくするため、社会階層/居住地域に至るまで消費者属性を分けて顧客を捉えました。
スターバックスのTargeting(ターゲティング)
スターバックスは出店地域の拡大にあたり、その地域のニーズを調査を欠かさずに行います。
同社は大都市の地域性を活かし、一定水準以上の給料を得ているオフィスワーカーを主軸のターゲットにして成功を収めました。
スターバックスという言葉を聞くと「オシャレ」「高級感」を連想する人が少なくないのもこのような事実が背景にあります。
また、営業時間帯や地域別でターゲットを上手く変えているのもポイントです。早朝は出勤前のオフィスワーカー,ランチタイムには主婦層,夜は会社帰りのサラリーマンをターゲットに設定しています。また、休日では家族連れをターゲットにするなど臨機応変に戦略を決定しています。
スターバックスのPositioning(ポジショニング)
スターバックスと競合コーヒーチェーンとの最大の差別化ポイントは空間にあります。
店のコンセプトを「サードプレイス:第3の場所」として発信し、会社,家庭の次の場所となる空間を提供しています。
この空間は利用顧客がリラックスした状態で時間を自由に過ごせることに主眼を置かれています。
そのため、スターバックスでPC作業や読書をする人も多く、オシャレな内装でくつろげる空間嗜み心を落ち着かせたい人から大人気です。
滞在時間に制限が無いのも「サードプレイス」のコンセプトによるものです。
また、競合とは一線を画したオシャレなイメージからSNS映えのする商品やアイテムの取り扱いや、シーズン毎のフラペチーノをリリースする等して競合との差別化戦略が図られています。
まとめ:顧客視点を大事にした一貫性のある戦略
STP分析はセグメンテーションで細分化したユーザー層のうち、いずれかをターゲットに定め、競合とのポジショニングを加味して戦略に活かす戦略です。そのため、S⇒T⇒Pの流れを一貫して行う必要があります。そのため、どこかで歯車が狂うと全体の戦略が傾く危険性があるのです。そのようにならない為に、顧客が購買活動をする上で重視している価値観は何か.自社が競合に劣らないポイント/自社の方向性は何かを明確にして戦略を考えなければなりません。逆に、そこまで徹底して戦略を練ることにより成功への道を確実に歩むことが出来るのです。