セグメンテーションの意味や方法を変数や事例を用いて分かりやすく解説

皆さんは商品を購入するときに男性向け/女性向けと書かれたモノを目にしたことはないでしょうか。スポーツをする人であれば、初心者向け/上級者向けなどの文言を目にしたことはあるでしょう。これらには全てセグメンテーションが反映されています。これにより、企業はターゲットを明確にし然るべき戦略の考案が実現するのです。そこで今回は、セグメンテーションについてやり方や例を交えて徹底解説していきます。

    目次

セグメンテーションとは

セグメンテーションとは、市場の細分化を意味します。
細分化の基準は多種多様で、年齢/性別/人種/居住地などがあります。

この作業を行う事により、企業は漠然とした消費者像を具体化してどの層に向けてマーケティング戦略を行うのかを明確にする事が出来ます。この作業は、ターゲット層を選定する前段階で行われ、非常に重要です。

セグメンテーションの必要性

消費者を細かく分類するのではなく、全体を1つの消費者として分類して商品を販売した方が大きな売上を創出できる可能性があるのに、企業は何故そうしないのでしょうか。

顧客ニーズの多様化

昔は大量生産・大量消費の時代であったため、人々のニーズは似たり寄ったりで単純なものでした。そのため、企業はマス広告を活用して大衆向けに自社製品のプロモーションを行えば売上の確保が可能でした。しかし、やがて市場が成熟し、人々のライフスタイルが多様化する現代社会では、顧客ニーズが多様化する事になりました。サラリーマンが殆どであった社会からフリーランスが出現し、ガソリン車が主流だった車社会からは環境に配慮されたEV車が登場しました。このように人々の行動様式や価値観が多様化する現代において、顧客ニーズを一元的に捉えたマスマーケティングでは消費者の心を掴むことが難しくなったのです。そこで、消費者をセグメント毎に分けてそれぞれのニーズを充足させるためにセグメンテーションが必要となったのです。

情報の非対称性の解消

テクノロジーが発展する以前の時代では、市場が未発達のため、現代よりも商品が少なく比較検討する手段がありませんでした。そのため、企業と消費者の間に情報の非対称性が生じほとんどが同じような商品を購入していました。しかし、IT技術が進歩しインターネットが普及したことにより、消費者はモノを購入する際に商品情報やレビューを検索やSNSから入手する事が可能になりました。そのため、情報の非対称性が解消され、消費者は自らの欲しい商品を気軽に入手できるようになったのです。そのため、企業は多様化したニーズを捉えるためにセグメンテーションを行う必要を迫られるようになりました。

セグメンテーションの目的

ここまでセグメンテーションの意味と必要性について解説してきました。
多様化した顧客ニーズに対応するために生まれたのがセグメンテーションでした。
それでは、セグメンテーションは実務においてどのように活用されるのでしょうか。
以下が具体的なセグメンテーションの戦略活用事例です。

プロモーション戦略
セグメンテーションにより、製品サービスのイメージを訴求したいターゲット層を洗い出す事により、CMや広告でその層に向けて特化した宣伝を行う事が可能になります。

★新製品開発
男性向け/女性向け/幼児用/高齢者用などのセグメンテーションにより、新製品開発の際に、顧客が抱えた不満を観察しそれを解決するための製品サービスを的確に創出する事が出来ます。

★販売戦略
自社に売上を最ももたらすのはどの層かを明らかにする事で、その層に向けた販売に注力し自社の売上を増加する事が可能になります。また、そのセグメントの属性に近いセグメントを巻き込んだ販売戦略を行う事で、売上を一層増加することが可能になるのです。

その他、セグメンテーションを活用した戦略におけるフレームワークの1つにSTP分析があります。
STP分析とは:意味や分析方法を事例を交えて解説

セグメンテーションの方法

一般に好みは人それぞれのため、セグメンテーションを行う事で消費者1人1人のニーズを把握しマーケティング戦略に的確に活かす事が出来ます。

しかし、セグメンテーションは細かく分ければ分ける程良いというわけではありません。あまりにも細かく分類してしまうと、必要以上のマーケティングコストを割くことになり、最悪の場合には損失を生んでしまう場合があるからです。

CMを例にみると、顧客全体を単一セグメントとして捉えて市場に発信すれば1パターンのCM作成のみで済んだのを、若年層,中年層,老年層に分けた場合3パターンのCM作成費用がかかります。

そのため、実際問題どの段階までセグメンテーションを行う必要があるのかを伸張に考える必要があるのです。

セグメンテーションに用いる変数

セグメンテーションを行うにあたり、何かしらの変数を基が必要となります。ここでは、最も用いられることの多い変数であるデモグラフィクス変数~市場固有の変数であるカテゴリーやブランドの変数を解説しています。それでは、各変数を早速見ていきましょう。

・デモグラフィクス:性別/年齢/家族人数/居住地域/所得/職業/ライフコース

この変数は最も広く使用される変数です。
サービス利用開始時や、クレジットカード発行の際に性別や年齢を登録したことがあると思います。それらの既に登録されたデータを基にして自社顧客にマーケティング施策を行う事が多いため、幅広く使用されています。

保険会社では、消費者に適切な保険営業をする為に、世代や年齢・性別といったデモグラフィクスの変数を用いてセグメンテーションを行います。

・ソシオグラフィクス:学歴/社会階級

学歴や社会階級もセグメンテーションの変数として挙げられます。人材派遣会社では、派遣社員/正社員/フリーランス/個人事業主の観点でセグメント化し、それぞれの階層にあったサービスの提供をしています。

・サイコグラフィクス:パーソナリティ/価値観/ライフスタイル

モノの消費が一定以上進み、精神の充足へ消費者動向が移行し始めると、顧客ニーズが多様化しました。その結果、デモグラフィクスだけでは消費者動向の詳細を掴むことが難しくなったのです。そこで、環境に配慮した製品を求める顧客や大人数よりも主人数が好き等、消費者を精神面でセグメンテーションする取り組みも生まれてきました。

市場固有のセグメンテーション変数

消費財やブランドマーケティングを考える時には特別な変数が使用されます。
カテゴリーとブランドに関する変数です。それぞれの変数に特徴がありますので以下で見ていきましょう。

カテゴリーレベルの変数

カテゴリは属性への選好/購買金額/ヘビーユーザー/ライトユーザー/利用チャネル/影響力といった基準があります。この変数では、商品を選ぶ基準などを知るが可能になります。

アイスを例に見てみましょう。アイスを購入する際の味や見た目の好み、アイスにどれほどの金額を割けるか、購入頻度はどれくらいかを基にセグメンテーションを行ったとします。このようにセグメンテーションを行う事により、自社の課題や改善点,施策が明確になります。

ブランドレベルの変数

ブランドは購買経験/見込み客/トライヤー/ロイヤル顧客/スウィッチャーといった基準があります。
この変数では、自社製品を購入する顧客の属性を見極める事が出来ます。

トライヤーは商品を試しに購入する顧客で、スウィッチャーは場面ごとに購入する商品を変える顧客を指します。これらでセグメンテーションする事により、マーケティング戦略の方向性が固まります。

セグメンテーションの条件

前述した通り、セグメンテーションは細かくすれば良いわけではなく、限度があります。
そこで、セグメンテーションをどこまでするかの4つの基準(通称:4R)を紹介します。

Realistic(規模の有効性)

Realisticでは、特定のセグメントをターゲットにして広告宣伝費や販促費に予算を割いた場合に、一定以上の利益を創出できるのかを見ていきます。

仮に、セグメンテーションにより適切なターゲット層を選定したとしても、そこが利益を創出するのに十分な市場規模でなければ避けた方が無難です。

Rank(優先順位)

Rankでは、「市場で自社の強みを発揮できるか」などをセグメント化した市場ごとに考えていきます。基本は優先順位の高いセグメントからターゲティングを行い、利益が見込めるかなどを基準にランク付けしていきます。

Reach(到達可能性)

Reachでは、ターゲット層に対して、プロモーションを通じて製品サービスの提供の難易度を分析します。地域で考えると、東京で販売している商品を関東地区のユーザーに届けるは容易ですが、離島や海外に届けると難化します。

Response(測定可能性)

Responseでは、ターゲット層のセグメントにプロモーションや営業を行ったその後の反応を測定できるかを考えます。

セグメンテーションやターゲティングが適切であったかを検証するには、数値を用いて定量化する事が大事になってきます。ニーズ検証および効果測定が可能な市場であればあるほど、PDCAを回しやすくその後のマーケティング戦略の立案に役立ちます。

セグメンテーションの事例

セグメンテーションはビジネスシーンにおいて広く活用されています。
中でも、有名な事例2つを今回はここにご紹介しておきます。

パナソニック レッツノート

パナソニックのレッツノートはデモグラフィクス変数を用いてセグメンテーションをした結果、多くのシェアを獲得しました。

昔のパソコンは現代のコンパクトで軽いパソコンとは違い、かなり重量がありました。そのため、持ち運びに適したデザインではありませんでした。そこで、パナソニックはサラリーマンに目をつけてセグメンテーションを行いました。

サラリーマン全体のうち「外回りで営業をするサラリーマン」のセグメントを生み出し、彼らをターゲティングしました。そこで、新たに生まれたのがコンパクトで持ち運びやすく、薄型で丈夫なレッツノートが誕生しました。

当時のPC業界は性能の高さで競争する企業が大半でしたが、その時代の潮流に流されずに、目的に合わせた適切なセグメンテーションをすることにより、パナソニックは成功を収める事が出来ました。

スターバックス

今日のスターバックスの成功の裏には緻密なセグメンテーションとターゲティングが背景にあるとされています。

スターバックスは職業/地域/社会階級/好み/喫煙の有無など、顧客を非常に細かくセグメントに分けて戦略を練っています。

特に、「サードプレイス(第3の場所)」は有名です。スターバックスはお洒落な雰囲気を醸成し、居心地の良い空間の創出に努めています。そのため、競合コーヒーチェーン店とは一線を画し、コーヒーの味だけでなく空間の提供を視野に入れた戦略を導入しています。これを皮切りとして、店舗の利用時間に制限を設けず人々が自由にくつろげる憩いの場を提供する事を主眼に置いています。

特に、接客においては競合他社との差別化が図られており、スターバックス固有のモノだと言えるでしょう。

まとめ

セグメンテーションは消費者を分類し、ターゲット層に対する適切なマーケティング戦略を実施するための手段として非常に広く使用されています。企業の規模に関わらず、この作業は売上を確保していく上でかなり重要なものになります。モノの消費から精神の充足を求めるようになった現代の成熟した市場であるからこそ、企業は消費者を細分化し顧客ニーズを詳細に把握する必要に迫られているのです。

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