イノベーションのジレンマとは?事例や原因を踏まえて解説

消費者のニーズが変化しやすい現代において、新興企業に抜かれてしまう大企業が後を絶ちません。企業が外部環境の変化に対応して生き残るためには、将来を見据えたビジネスの展開が必要です。しかし、これに対応できずに競争優位性を失う大企業が多い背景には、イノベーションのジレンマが存在します。

そこで今回は、イノベーションのジレンマの意味や原因、解消法について事例を踏まえて解説していきます。経営陣の方は是非参考にしてください。

    目次

イノベーションのジレンマとは

イノベーションのジレンマとは、市場において一定のシェアを占めた企業(一般に大企業を指します)が、環境の変化に追いつけず売上が低迷してしまう現象を指します。

最近では、様々なITのおかげで様々なビジネスモデルが登場し、業界構造の変化が激しい業界も存在します。そのため、外部環境分析を怠るとイノベーションのジレンマを招き企業は新興企業にシェアを奪われてしまうわけです。

参考:グロービス経営大学院 イノベーションのジレンマ

イノベーションのジレンマが起きる原因

既に成功している企業が、何故イノベーションのジレンマに陥ってしまうのでしょうか。このように疑問に思う人もいるでしょう。そのような方の為に、この章ではイノベーションのジレンマが起きる原因を3つ紹介しています。

既存製品への依存とイノベーションへの無関心

古くからある大手企業の多くは、既存の製品に関する技術を改善・改良して、既存顧客からの顧客満足度を充足させる形で売上を上げてきました。そのため、新たに業界構造を激変させるようなイノベーションを起こさずとも、一定程度の売上が見込めるため、既存製品への依存が激しくなります。

また、新たな破壊的イノベーションにより新市場が創出されたとしても、市場が初期段階であるため既存市場よりも収益性が低かったり、新たな投資費用が増加するため大企業ほど破壊的イノベーションへ無関心だったりします。そうすると、気が付いた時には既にイノベーションへ対応する時期が遅く、新興企業の創出した市場が反映し自社の顧客を奪われてしまう現象が起きるのです。

この例では、かつて反映していたレンタルDVD屋の「ブロックバスター」が挙げられます。この企業は、Netflixが新たにサブスクリプション型の映画・ドラマ配信サービスの市場を創出した時、消費者からは決して受容されることは無いと過小評価していました。しかし、時代が進むにつれてサブスクリプション型サービスが当たり前になった時には、既に新市場に参入しても時が遅く、売り上げを確立できずに倒産してしまいました。

新市場への無関心

先述した通り、破壊的イノベーションにより創出された新市場は、初期段階の市場規模は既存市場と比較すると小さいです。そのため、既存市場で圧倒的なシェアを獲得している大企業は、収益性が低く成功するかも分からない新市場へわざわざ投資することに関心を寄せません。

また、大企業は新興企業よりも株主を始めとしたステークホルダーからの見え方をとても気にします。そのため、新市場に下手に投資しても収益が上がらないとマイナスイメージが植え付けられ、投資してもらえない恐れもあるため新市場へ無関心になるわけです。

株主の意向を気にするがあまり、不祥事や利益低減を招いてしまうモラルハザードの記事も参考までにご覧ください。

真のニーズを理解していない

大企業は、既存製品に改良を加えてアップデートし続ける持続的イノベーションを重んじます。そうすれば、よほどの事が無い限りファン顧客は自社製品を受容し続けてくれるからです。しかし、持続的イノベーションに力を入れ過ぎてしまうと、大きな顧客離れを招いてしまいます。

何故なら、製品改良には多額の投資が必要であり、その費用を売上利益で回収するため、高性能な製品を提供すればするほど消費者の金銭的コストの負担が増加してしまうからです。「カメラ」を事例に見てみましょう。一般に、カメラは画素数が高いほど写真が鮮明に映る為、企業は技術を駆使して画素数の高い高性能なカメラ開発を目指します。にも関わらず、「写ルンです」や「手ブレ防止カメラ」が近年では流行っています。

これまで、大企業は消費者のニーズは画素数が高く鮮明に写真を取れるカメラであると考えていたのが、実は簡単に写真を取れるなどの手軽さや価格に真のニーズがあったのです。そうすると、顧客の購買検討要素に手軽さの比重が大きくなり、大企業がこれまで培ってきた高画素数を実現するための技術は、さほどニーズが無くなってしまうわけです。そうして、いつの間にか他企業にシェアを奪われイノベーションのジレンマに陥ってしまうのです。

イノベーションのジレンマの事例

ここまでのイノベーションのジレンマの解説を見た方の中には、具体的な事例を知りたいと思う方もいるでしょう。そのような方向けに、この章ではイノベーションのジレンマの事例を分かりやすく解説しました。事例を見る事で、イノベーションのジレンマについて理解がより一層深まるでしょう。

イノベーションのジレンマの事例:携帯電話

かつて、日本ではガラパゴス携帯と呼ばれる日本独自の多機能な携帯電話が人気を博していました。その技術は凄まじく、海外企業が日本の携帯市場に参入できないほどでした。

しかし、Appleによってガラケーに備わっていたボタン機能を取り払い、液晶をタッチする事で文字を打てるiPhoneが登場したことでガラケーが一気に衰退していきます。また、iPhoneを見習って中国や韓国が低コストで模倣化した携帯を販売したり、android形態が登場したことで、ガラケーのシェアは低迷してしまいました。

この時、日本の携帯会社の多くは「思いし目立たない、バッテリーの持ちも悪い」と評価し、市場の小さなスマートフォンは流行らないと思っていました。しかし、時代が進むとスマートフォン市場がガラケー市場を追い抜き、しまいにはかつて多く存在した日本の携帯会社は数社程しか生き残れなかったのです。

これこそ、典型的なイノベーションのジレンマの事例であると言えるでしょう。

イノベーションのジレンマの事例:レンタルビデオ

レンタルビデオ屋の「ブロックバスター」は、かつてアメリカに本社を置く巨大レンタルビデオ会社でした。この会社は、実店舗でのレンタルビデオビジネスを中心に、9000もの店舗を展開していました。

時を同じくして、新興企業であるNetflixがIT化の波に乗じて「サブスクリプション型動画配信サービス」を提供した時、ブロックバスターは「消費者から人気は出ない」と高を括っていました。しかし、いつの間にかシェアは越され、実店舗でビデオをレンタルする顧客はどんどん離れてしまいました。

そこで焦ったブロックバスターは、ストリーミング型インターネット動画配信サービスなどを始めるものの、先発優位を築いているNetflixとの差はどんどん開き最終的に倒産してしまいます。ブロックバスターの敗因は、多くの実店舗を構えているが故に、当時は市場が小さかった店舗を構えなくて済むサブスク型ビジネスを過小評価していた点にあるでしょう。

イノベーションのジレンマの対策

では、イノベーションのジレンマを防ぐにはどのようにしたら良いでしょうか。ここでは、イノベーションのジレンマを防ぐ対策について3つ紹介しています。

既存の価値観だけに縛られない

イノベーションのジレンマは、既存の価値観に縛られたビジネスを展開する事で起きてしまいます。破壊的イノベーションによりもたらされるのは、新たな価値観や競争項目です。

そのため、イノベーションによる環境変化に対応するためには、これまでの価値観に偏り過ぎる事無く、新たな価値観を取り入れなければなりません。

既存顧客以外にも耳を傾ける

これまでにも説明した通り、大企業は既存顧客の要望を基に製品を改良する持続的イノベーションに比重を置いています。しかし、破壊的イノベーションを起こそうとすると、新たな価値基準を生み出すため既存顧客からの高い満足度は得づらくなります。

しかし、そこで既存顧客の意見ばかりに耳を傾けていると、破壊的イノベーションによりもたらされる新規顧客を呼び込めずに、イノベーションのジレンマに陥ってしまいます。そのため、既存顧客よりも新規顧客のニーズを深ぼる形で、イノベーションを起こしたり、イノベーションに対応するようにしましょう。

小規模な範囲での試行錯誤

破壊的イノベーションは、市場規模が小さな場所で突如開花します。イノベーションのジレンマに陥らないようにするためには、小規模な範囲でビジネスを行い新規顧客の様々なニーズに耳を傾け試行錯誤を重ねるようにしましょう。

また、小さなビジネスであるため失敗しても株主などにあまり追及されなくて済みます。まずは、小さく始めて市場のどこにニーズがあるのかを掴むことが大事です。

まとめ

イノベーションのジレンマは、どの企業でも起こりうる話です。どうせ大したことないから大丈夫だと思う気持ちが、会社を傾かせてしまうかもしれません。

これからの時代は、現代よりもさらに早いスピードで市場が変化していくでしょう。その際、時代の変化を生み出せる側になるのか、時代の変化に対応できず衰退していくのかは、イノベーションのジレンマを理解したビジネスを展開しているか否かがカギを握るでしょう。

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