VRIO分析とは|やり方や事例をわかりやすく徹底解説

VRIO分析

市場において成功を収める企業は必ず「自社」と「他社」を意識してビジネスを展開しています。何故なら、他社と比較した「自社の強み」を把握しそれを活かす事で競争優位を確立できるからです。この「自社の強み」を把握し評価する為のフレームワークの1つにVRIO分析があります。今回は、VRIO分析の意味や進め方について事例を用いて解説します。

    目次

VRIO分析とは

VRIO分析とは、企業の持つ内部資源(経営資源)を評価し、それをどれほど有効活用できるかを確認するためのフレームワークです。

このVRIO分析は、RBV(企業の競争優位性は優れた内部資源によって確立されると示した理論)を提唱したバーニー氏により考案され、現代でも広く活用されています。この分析では、自社内に競争優位を構築するための経営資源があるかを判断していきます。その際に、企業の保有する経営資源に対して4つの問いに答える形で競争優位性に繋がる経営資源があるか否かを見ていきます。

参照元:VRIO分析|グロービス学び放題

VRIO分析における4つの問い

VRIO分析では、4つの問いにYESNOで答える形で自社の強みを洗い出します。これにより、自社の持つ経営資源が市場で競合に勝る優位性を見出す事が出来るのです。ここでは、4つの問いについて説明しています。

1.経済価値(Value)に関する問い

経済価値(Value)では、「自社の経営資源に価値があるか?」という問いにYESかNOで答えます。

「自社の経営資源を持つことで利益を創出できるか」、「その経営資源により、ビジネス機会を見逃さず会社を脅かす危機に対応できるか」などを思い浮かべこの問いに対する答えを考えていきます。

もし、企業が価値ある経営資源を保有している場合、企業の外部環境における機会を活用または無力化できます。

希少性(Rarity)に関する問い

希少性(Rarity)では、「自社の経営資源を保有する企業が少数であるか?」という問いにYESかNOで答えます。

市場からの需要に対して供給が足りていなければYES、供給過多の状態であればNOになります。

当然、競争する業界内に自社と同じ経営資源を保有する企業がいなければ、競争優位性を確保しやすくなり強みに繋がります。

模倣困難性(Imitability)に関する問い

模倣困難性(Imitability)では、「自社の経営資源の獲得・開発・模倣コストが非常に高いか?」という問いにYESかNOで答えます。

つまり、「新規参入や競合の模倣難易度がどの程度高いか」を考えていきます。

金銭的コストや時間的コストが大きい他、特許等の法律で守られている、高い技術が無ければ模倣出来ない場合はYESと回答します。

バーニー氏は、短期的あるいは簡単に模倣されにくい経営資源の条件として①ド独自の歴史的条件②因果関係の不明性③社会的複雑性を挙げています。このような経営資源を有する企業は中長期的な優位性を築きやすいと提唱されています。

組織(Organization)に関する問い

組織(Organization)では、「自社の経営資源を活用するための組織的な方針が整備されているか?」という問いに対してYESかNOで答えます。

如何に優れたリソースを有していてもそれを活用できなければ、宝の持ち腐れとなってしまいます。

そのため、経営資源を有効に活用できる組織体制があるならばYESと答えます。

VRIO分析のやり方

では、ここで実際にVRIO分析をどのように進めていくのかやり方をご紹介していきます。下記の図はVRIO分析の工程を表しています。

VRIO分析 図

VRIO分析は、経済価値(Value)⇒希少性(Rarity)⇒模倣困難性(Imitability)⇒組織(organization)の順番で進めます。

まず、「自社の経営資源に価値があるか?」の問いがNOだった場合、競争優位性は見込めず、競争劣位にあると言えます。そのため、経営資源の価値は強みではなく弱みに該当します。仮に、YESだった場合はその経営資源を土台に次の問いへ進みます。

次の「自社の経営資源を保有する企業が少数であるか?」の問いがNOだった場合、業界内において平均的な立ち位置にあるため、競合と同程度の強みを保有する「競争均衡」の状態と言えます。仮に、YESだった場合はさらに次の質問へ回答します。

この一連の流れで残りの模倣困難性と組織に関する問いを答える事で自社の強みが明らかになります。そうする事で、自社が市場でどのように戦っていくのか・強みをどのように活かして市場シェアを高めていくかを考えられるのです。

VRIO分析の問題点・デメリット

自社の経営資源に着眼して有効な経営戦略の考案に繋げることが出来るVRIO分析ですが、実践するうえでの問題点およびデメリットが指摘されています。

問いが抽象的で判断が難しい

VRIO分析は4つの問いが抽象的で実態を掴みずらいため扱いづらい問題点があります。例えば、1つ目の問いでは経営資源に価値があるかに対してYESかNOで答えますが、そもそも企業は誰かのニーズを満たす為に製品サービスを提供しています。

そのため、誰かにとって価値の無い経営資源だと判断されても、それを購入する顧客は一定数いるわけであり、その面では経営資源に価値があると言えるでしょう。逆に、1つ目の問いで経済資源に価値があると答えても、それはあくまで企業目線の話であって消費者からしたら価値が無いと判断される場合もあります。このような曖昧さを回避するには、どの視点で何を持って価値があるのかを定義付けて問いに答えなければなりません。

経営資源の強さは相対的に決まる

VRIO分析はRBVを基に提唱され、RBV・VRIO分析共に経営資源の強みが企業の競争優位性を構築すると考えています。しかし、経営資源の強みは絶対評価ではなく相対評価のため、相対的・主観的にしか判断できない点があります。これはRBV・VRIO分析の提唱者であるバーニー氏も認めています。

例えば、日本中で支持され高いプレゼンスを誇る企業であっても、世界規模で見ると指示されずに海外進出を諦めるケースも少なくありません。つまり、「井の中の蛙」になってしまう可能性があるのです。よって、VRIO分析を行う際にはどのレベルでビジネスを展開しているのかを定義したうえで取り組むようにしましょう。

VRIO分析を行う際に注意すべきポイント

VRIO分析は、ただや闇雲に4つの質問にYESかNOで答えていくだけでは不十分です。何故なら、VRIO分析のデメリットで説明した通り回答者によって答えが変わるからです。そのような曖昧さを避けるためにも、ここではVRIO分析を行う際に注意すべきポイントを2つ解説しています。

回答者の目線や言葉の定義を明確にする

前述したとおり、VRIO分析は問いが抽象的であるがためにYESかNOではっきりと区別するには難しい場合があります。そのため、各問いに答える際は「誰にとって価値があるのか」「何をもって価値があるとするのか」を明確にしておきましょう。そうする事で、問いに答える中で目的を見失わずに上質な経営資源を基にした戦略を規定できるでしょう。

自社のポジショニングを明確にする

経営資源の強さは相対的に決まるため、特定の業界では強いとされていても他業界では全く強くないと判断される事があります。そのため、自社のポジショニングを明確にしていないと、思わぬ不利益を被ることがあるでしょう。そのため、「自社がビジネスを展開する業界」「どのポジションで戦っているのか」などを明確にしたうえでVRIO分析に取り組むようにしましょう。

VRIO分析の事例

では、実際にVRIO分析を活用して成功を収めている企業事例を見ていきましょう。事例もあわせて知ることで、VRIO分析に対する理解が深まるだけでなく活用法の解像度も上がるでしょう。

ここでは、「トヨタ」と「ユニクロ」の事例を取り上げています。

VRIO分析:トヨタの事例

トヨタの強みは「トヨタ生産方式」「サブスクリプション型車両への新規参入」「世界最大級の自動車メーカー」などが挙げられます。ここでは、その中でも代表的な「生産」に着目してVRIO分析をしていきます。

1.経済的な価値(Value)はあるか?

トヨタは自社で工場を構え車両を生産しています。また、生産台数に応じて迅速に製造・細かく修正が出来るのも大きな価値を保有していると言えるでしょう。そのため、ここではYESと回答します。

2.希少性(Rarity)はあるか?

自社で工場を構える企業は数多く存在しますが、ロボットと共存して工場運営をする企業は中々ありません。そのため、ここでもYESと回答します。

3.模倣困難性(Imitability)は高いか?

世界でも注目を集め評価されている「7つの無駄」を省いた「トヨタ生産方式」は、規模の経済を効かせているだけではなく複雑な構造で成立しています。また、模倣自体にも工場の生産方式を見直し生産を一度止めなければならないため、時間的コストや金銭的コストも非常にかかり模倣困難性が高いです。

4.組織(Organization)は整っているか?

トヨタ生産方式は高い教育を受けていないと実践できないとされています。また、徹底して効率的な生産方式を確立したトヨタの背景にはそれだけ従業員を統率できたマネジメント力が背景に存在します。そのため、ここでもYESが答え、トヨタは中長期的な競争優位性を確立していると言えます。

VRIO分析:ユニクロの事例

ユニクロを運営するファーストリテイリング社はファッション業界のリーディングカンパニーです。同社はSPA(呼ばれる企画⇒生産⇒販売を自社で完結させるビジネスモデルにより今日のプレゼンスを確立しました。

1.経済的な価値(Value)はあるか?

ユニクロは「低価格かつ質が高い衣料品」を提供しています。また、SPAにより市場の需要をいち早く察知し生産量の増減に反映できるため、経済的価値は十分にあると言えます。

2.希少性(Rarity)はあるか?

ユニクロは他のアパレルメーカーがパートナー企業と連携し生産と企画・販売を分けている一方で、SPAを採用し企画⇒生産⇒販売を統括しているため、希少性は高いと言えるでしょう。

3.模倣困難性(Imitability)は高いか?

ユニクロの取り入れるSPAは模倣困難性が非常に高いと言われています。一般的なアパレルメーカーがSPAを導入しようとすると、金銭的・時間的・人員的コストをかなり割く必要があるからです。これが、他の企業がSPAを採用したくても出来ない大きな要因となるわけです。

4.組織(Organization)は整っているか?

ユニクロの表の強みをSPAと表すならば、組織力は裏の強みと言えるでしょう。SPAをフル活用するためには、企画から販売における一連の流れが滞りなく行われるようにしなければなりません。また、日本国内にとどまらずアジア圏を中心とした海外進出により現地の外国人の教育もしているため、非常に高い組織力が整っていると言えるでしょう。

まとめ:VRIO分析は経営資源から競争優位を見出す

VRIO分析は、自社の保有する経営資源に4つの問いを投げかけることで価値を把握し、競争優位の可能性を検証します。

これにより、今までは強みと把握していなかった経営資源が新たに強みであると認識し、それを活用した経営戦略を策定できるようになるのです。

VRIO分析を進めるにあたって5フォース分析との兼ね合いにより問題点が指摘されてはいますが、それに注意して分析を進めることで企業活動をより効率的に進めることが出来るでしょう。

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