モラルハザードとは何かを事例を用いて原因と対策を分かりやすく解説

「振替日があるから今日くらいずる休みしてもいいや。」「この商品は5年保証だから少しくらい雑な扱いをしてもいいや。」このようにマイナス要素を補填するための制度があるゆえに余計にマイナス行動をとってしまった経験はないでしょうか。これらを総称して世間ではモラルハザードと呼びます。経営の世界では「コーポレート・ガバナンス」制度が逆手となり攻めよりも守りの経営に走ることが多々あります。これらを総称しモラルハザードと呼びます。今回はこのモラルハザードが起きる原因・対策を事例を用いて解説していきます。

モラルハザードとは

モラルハザードの意味は下記のとおりです。

  1. 経営倫理において、本来なら倫理上、期待される行為を、金銭的な理由から裏切ること。
  2. 例えば、ストック・オプションを得るために、中期的な利益を犠牲にしてまで投資などを行わず、短期的な利益を上げること。

モラルハザード(経営戦略)の意味

もともとは保険業界で使用されていた言葉ですが、現在ではその言葉が派生し経営戦略論にまで適用されています。被保険者が保険に加入することで病気や事故をした際の補填を頼るため、かえって健康がないがしろにされてしまう事を指す用語として使用されていました。例えば、自動車保険に加入しているがゆえに多少乱暴な運転をしてしまう。株主が経営を委任している経営者に対して高い報酬金を支払っているが、経営者はその地位を維持したいがためにかえって保守的な経営に走ってしまう。このようにリスク回避のために用意したルールがかえってリスクを生んでしまう状態をモラル・ハザードと呼びます。

モラルハザードが起きる理由

モラル・ハザードが起きる理由は、リスクに対して保険取引を行ったことが原因となり危機が到来しても保険があるから大丈夫だと、本来の目的を疎かにしてしまう事にあります。この根底には、リスクを回避するために保険に加入したとしても完全にリスク回避をしたとはいえない事実があるのです。万が一、保険に加入したとしても保険金が支払われるような事故をしなかった場合、保険金のお金は無駄になってしまうというリスクがあります。この心理が働くことによりモラルハザードが起きてしまうのです。

逆選択の心理

モラルハザードに関連した言葉に逆選択があります。これは取引の当事者間の持つ情報が平等ではなく格差が存在する情報の非対称性がある場合に起きる可能性があります。保険会社は保険に加入したい見込み客が病気にかかる確率を見極めることはできません。通常であれば、病気にかかる確率の高い人が高い保険料を支払い、その逆に位置する健康な人が低い安い保険料を支払います。しかし、保険会社は加入者の健康度合いを正確に査定できるわけではないので、病気にかかる確率が高い人と低い人も同じ保険料を支払うように設定します。

すると、健康な人は保険料を割高に感じ、不健康な人は保険料を割安に感じます。この結果、健康な人は保険加入を避け不健康な人ほど保険加入しようとします。そして、健康な人からの保険料は減り不健康な人への保険手当の支払い額が増大した保険会社は更に保険料を増額します。この時点で健康な人の保険加入率は当初よりも大幅に下がってしまうのです。これを逆選択と呼びます。

モラルハザードは取引開始後に発生しますが、逆選択は取引開始前に起こるのです。

モラルハザードの事例

ここまで、モラルハザードについて解説してきましたが、次に事例を用いて更に詳しく見ていきます。経営の世界ではモラルハザードをよく理解していないと企業業績が下降するケースが多数存在するので注意が必要です。

 

事例1:株主と経営者の関係

各企業の経営者は代表取締役で選任され資本出資者である株主の代わりに会社経営を代理でおこないます。この場合、株主は会社経営を委託する依頼人(プリンシパル)であり経営者が代理人(エージェント)です。また、依頼人である株主はリスク分散のため1つの企業だけでなく複数企業へ出資するポートフォリオ投資を行っているのが通常です。勿論、経営者が株主の代わりに問題なく経営を行っていれば問題ないですが監視の目を省くと経営者による横領や職務怠慢の可能性が浮上します。しかし、株主は経営者と違い複数企業を目にしているため出資企業すべてに監視が行き届いているわけではありません。一方で経営者は1つの会社経営のみをしているため情報の非対称性が生まれてしまいます。経営者は取締役会で選ばれた会社経営の代理人であるため、企業業績が下降していたら解任されてしまいます。そこで、自分の地位を守るために情報の非対称性を利用して粉飾決算を行ったり、攻めの経営を取らず守りの経営をするのです。

事例2:医療保険の場合

医療保険に加入しているがために起こるモラルハザードも存在します。医療保険に入っていると病気になった際に診察料や処方箋料の自己負担額が安くなります。仮にこの制度が無かった場合は医療費が高額なものとなり病院に通うまでの負担が大きくなるのです。それを防ぐために医療保険が存在するのですが、この制度に甘んじて病気にかかっても医者に簡単に診てもらえるという認識が高まってしまう可能性があります。結果、日常の中で健康に気を遣う人が減少するのです。その他、医療費が安いのを理由に診察を受けるほどの症状ではなくても病院に足を運ぶ人が増え、真に医療を必要とする患者への診察がおくれてしまうモラルハザードも存在します。

モラルハザードを防ぐ対策

モラルハザードが起きる可能性が高まる理由は2点あります。

①契約者間に情報の非対称性が存在する
②監視の目が少ない

つまり、この2点を解消する事でモラルハザードが起きる可能性が低くなるのです。株主と経営者の間に起きるモラルハザードは、会社経営を依頼される経営者が株主に比べて多くの情報を保有している為、自分に有利に働くように振るまう傾向があります。また、経営者は1つの企業のみを見ているのに対して株主は複数企業を見ている場合が殆どです。そのため、監視の目が薄くなりモラルハザードが起きるのでした。この防止策として、取締役会において社外からの取締役の導入や監査法人による財務書類のチェックが挙げられます。

まとめ

モラルハザードが起きる根本は人間の心理状態にあります。そのため、完全になくすことは厳しいとされていますが、法的拘束力やインセンティブ規制を設ける事により多少なりともモラルハザードの危険性を低くすることが出来ます。逆選択も同様で、無くすことはほぼ不可能に近いです。これもモラルハザードと同様に情報の非対称性が負を生んでしまうため、公正かつ健全な情報開示を心掛けてビジネスを展開する事が求められます。そうすることで、自社にプラスとなる結果が訪れるのです。

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