新製品開発の進め方を具体的に分かりやすく解説

皆さんは企業が入念に消費者ニーズを探ったうえで商品を出した結果商品が売れる割合はどれくらいでしょうか?答えは40%。如何にマーケティングのプロが入念に製品を売りに出す準備をしても実際に市場に導入されないと成功するか分からないのです。

このような現状があるにも関わらず、私たちの日常生活では新製品は市場に山ほど流出していきます。特に、日本には四季が存在する為企業は各季節に合わて新製品を市場に売りこみます。通常、新製品の開発には技術系の部門が中心となり取り組みますが、同業他社との研究開発により新たな薬剤や車を開発する企業も現在では少なくありません。勿論、その過程においてもどのような商品が市場から評価されるのかを考えて開発に取り組む必要があります。以下では、マーケティングの観点から新製品開発の進め方を解説します。

    目次

そもそも製品とは

マーケティングでは製品はそれ自体だけでなく、付随するサービスなどを含めた広義なモノであると定義づけられます。本質的なニーズを満たす機能を核に、使用しやすいデザイン等の補助製品、補完サービスを包括的に含むのが製品と称され属性の束とも呼ばれます。

車を例に見てみましょう。本質的なニーズを満たす機能が移動を可能にする車輪で、ワゴン型,セダン型などのフォルムや雪道を走るスタッドレスなどは補助製品に該当します。これらの属性が集まった束を製品と呼ぶのです。

消費者が製品を購入する意義

消費者が製品を購入するに際には必ず意義が存在します。人間が生命活動をするうえで欠かせないのが食事です。したがって、世の中の多くの人々は余程生活に困窮していない限りは食料品とお金を取引して食欲を満たす為に製品を購入します。ここまでみて分かる通り、製品購入には因果関係が存在するのです。

機能的価値vs意味的価値

消費者が製品を購入する動機は様々なものが存在しますが、消費を大きく二分すると機能的価値と意味的価値に分けられます。機能的価値は文字通り、製品の機能を重視して購入する消費活動です。冷房を機能的価値の観点で購入した場合、熱い部屋を冷風により冷ます機能を重視して購入したと言えます。

一方、意味的価値は消費者が製品に対して何かしらの意味をつける事で生まれる価値です。ラグジュアリーには意味的価値が強く含まれ、それを身につける事で自身の社会的地位を表す事を目的として購入される場合が多々あります。その他、思い出の製品を購入した場合にも機能ではなく自身の想いを尊重して購入したのであれば意味的価値に基づく消費になります。

ジョブ理論に基づく新製品開発

企業は何のために新製品を開発するのでしょうか。利益を創出するため,他社に後れを取らないため等の理由が存在しますが、ここではより根本的な意義を解説していきます。

経営学の観点では新製品開発は題解解決,ジョブだと見なされます。一般に、消費者は何か知らの問題を穴埋めするために製品を購入します。ドリルを購入する顧客の真のニーズはドリルではなく穴なのです。さらにこれを追及すると、何故その穴が欲しいのかといった次元までブレイクダウンします。すると、真の顧客ニーズが見えてきます。つまり、企業は顧客が真に抱える問題を解決するために企業は新製品開発を行うのです。企業は必然的に顧客のニーズは何かを念頭に置いて新製品開発に取り組む事が求められてくるのです。

新製品開発のプロセス

新製品開発には一定の工程があります。ここでは、アーバンとハウサーが提唱した新製品開発の5つの工程を紹介します。

①機会の識別
消費者のニーズを探り、どのポイントに新製品を生み出す余地があるのかを捉える段階です。

②デザイン
新製品開発の機会を基に、これまでになかった新しいものを生み出すためにターゲットを規定し、製品コンセプトを決定します。

③検証
試作品を製作しモニターを使って検証します。

④市場導入
検証の結果、評価が高かったものを市場に導入します。

⑤ライフサイクル管理
製品の導入期・成長期・成熟期・衰退期に合わせたマーケティングを行います。

この5工程を簡単にまとめると、企業は消費者の二ーズを基にしたアイデアを基に製品をデザインし検証を通じて市場に導入を行うのです。

コンセプトの必要性

新製品開発においてコンセプトは重要視されます。何故なら、コンセプトによって組織の方向性(製品統合性)を定める事が出来るからです。この価値観はブランドにも重視されます。スターバックスを例に見てみましょう。同社は、第3の場所をコンセプトにしています。家庭でも職場でもない居心地の良い場所としてスターバックスを利用してもらうためにこのコンセプトを設定しているのです。店内はリラックスできる雰囲気が醸成され、友達あるいは一人で気軽にくつろげるスペースが確保されています。

顧客ニーズを探る手段

ここまで見て分かる通り、企業の製品開発の根底には顧客ニーズが存在します。とはいえ、企業はどのようにして顧客ニーズを発掘するのでしょうか。そこで重宝されるのが消費者インタビューです。それでは、複数のインタビュー手段を下記で解説していきます。

マーケティングでは、ニーズとウォンツの考えが根幹にありこれを理解していないと良い商品を作る事は難しいです。

ニーズとウォンツについてはマーケティングとは何かを解説した記事で紹介していますので、ご覧ください。

インタビューの種類

①グループインタビュー

グループインタビューの以下の人数で実施されます。

・モデレーター(司会者)
・複数の被験者(5-8人)

この調査では与えられた議題に対してモデレーターが仕切り被験者が議論を進めていきます。その様子を企業のマーケターや調査員が別の部屋から観察し顧客ニーズを追求していきます。

グループの設計方法

①同じ対象条件(性年代・経験・価値観)で1つのグループを構成
②最低2つ以上のグループを設計
⇒グループ間比較を前提
③各グループの対象者は5-8名
⇒ある程度同じトピックに共通にはなせる人数の限界値

インタビューの流れ
①モニター調査の趣旨説明・自己紹介
②使用状況
③特定の製品に抱くイメージ
④製品理解について
⑤個別要素への意見
⑥購入の促進・阻害要因

※インタビューのポイント

グループインタビューの特徴は聞き手の顔色を伺えることにあります。そのため、話し手が周りと合わせてしまう可能性があるため、議論が活発になるような雰囲気を醸成し誰でも発言しやすい場を設ける事が求められます。そのために、インタビューの流れは誰でも気兼ねなく話せるような自己紹介から始まり、終わりにかけてテーマの本質に迫る議論へとつなげていきます。もう1つのポイントはYes or Noで答える質問はしない事です。アンケート調査とは違い、グループインタビューでは議論の深堀を行う必要があるため、5W1Hを意識した質問がされるのが一般的です。

②半構造化インタビュー

半構造化インタビューは被験者にいくつかの種類のモノを場合分けしてもらい、その結果から消費者のニーズを把握するインタビュー法を指します。ここでは、レバートリーグリッド法と評価グリッド法を紹介していきます。

レバートリーグリッド法

この方法では、インタビュー結果を基に共通する属性と共通しない属性を分けていきます。果物(オレンジ・グレープ・桃)を例に見ていきましょう。オレンジとグレープには酸味がありますが、桃には酸味はあまりありません。一方、桃とグレープの皮は薄いが、オレンジの皮は厚いです。このように属性ごとで調査対象を分類し属性ごとのニーズを把握する手法をレバートリーグリッド法と呼びます。

評価グリッド法

この方法では、属性間の比較を行い製品を評価していきます。
先ほどの果物グループ用いて例を挙げます。

ある被験者に果物を評価してもらった結、好き(桃)vs嫌い(オレンジ・グレープ)となりました。この時、好きのグループと嫌いのグループにはどのような違いが生じるでしょうか。これを追求していくことで消費者のニーズを捉えていくのが、評価グリッド法です。

線形選好関数

消費者が製品を購入する際にデザインや機能などを比較します。その時に表れるのが選好(好み)です。しかし、選好は個人によりバラバラであるため正確に把握する事は難しいです。これを分かりやすく測定するために生まれたのが、線形選好関数であり、以下のように表せます。ここではスマホを例に見ていきます。

線形選好関数
全体(スマホ)=OS+キャリア+メーカー+サイズ+電池+カメラー価格

この式を見る事で、顧客が求める製品の要素を把握する事が出来ます。全体の選好(スマホ)に対して、OS,キャリア,メーカー,サイズ,電池,カメラ,価格などを部分効用値と呼びます。

企業は消費者の部分効用値を調べる事で、消費者が各要素をどれほど重視しているのかを図る事が出来ます。部分効用値を把握するための手段の1つに自己申告制と呼ばれるものがあります。例えば、スマホを購入する時の比較要素を5段階評価してもらいます。

この時、OS2,キャリア1,メーカー1,サイズ2,電池1,カメラ1,価格5であれば、個の消費者は極端な価格志向者であることが分かります。また、価格以外の機能はさほど気にしていません。そのため、この属性をターゲットに通常のスマホよりも機能を落としてコストカットし、低価格でスマホを売りだす戦略を打ち立てる事が可能となります。

コンジョイント分析

この分析は新製品開発に非常によく使用されます。これは線形選好関数と同様に消費者の選好(好み)を把握するための分析です。しかし、選好を構成する要素が何かを把握する事は難儀です。それを把握するための手段がコンジョイント分析です。

コンジョイント分析では2種類の仮想の製品プロファイルを基に分析を行います。これを被験者に提示し好みの製品プロファイルを選択してもらう事で消費者選好を洗い出していきます。

以下の例では、属性に対する価値を深堀して選好を洗い出しています。

・属性に対する価値
⇒ios,androidのどちらのOSが好きか
⇒docomo,au,SoftBankどのキャリアが好きか
⇒iPhone,Xperia,Galaxyどのブランドが好きか

このようにしてそれぞれの部分効用値を算出し組み合わせる事で商品モデルを考案する事が出来ます。これを選択シミュレーションと呼びます。

選択シミュレーションにおける2つの選択肢

選択肢1:ios,docomo,iPhone
選択肢2:Android,docomo,Xperia,高画質カメラ

選択肢1は選択肢2に比べると機能面では劣るため、価格を下げるか新機能搭載を考える事が出来ます。新製品開発の方向性を様々な方向に派生する事が選択シミュレーションにより可能となるのです。

まとめ:顧客ニーズを意識した新製品開発が第一

どんなに優れた技術を駆使して新製品を開発したとしてもそれがヒットするかは市場に流してみないと分かりません。しかし、その成功確率を多少なりとも上げる事は可能です。そのために、顧客ニーズは何か,製品コンセプトをどうするか等を明確にして新製品開発に取り組む事が大事なのです。文明が発達するにつれて消費者の選好は多種多様に変化していきます。ターゲットをどこに絞るか・市場は何を求めているのかを追及し新製品開発に励みましょう。

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