インターナルマーケティングとは、従業員に対するマーケティング活動を指します。通常、マーケティングは製品や顧客に対して行われる事が多いですが、従業員に対するマーケティングも企業の業績を上げる上でとても重要になってきます。
インターナルマーケティングは、従業員の満足度を向上させることが顧客満足度の向上に繋がると考え実践されています。
- 従業員の士気が感じられない
- 自社に対するイメージアップを狙いたい
- 顧客満足度や業務効率を上げて利益を向上させたい
このように考えている経営者の方はこの記事を是非参考にしてください。特に、人材不足に悩む中小企業を経営者の方は、インターナルマーケティングを少し行うだけでも人の集まり具合が変わるのでこれを機に導入してみると良いでしょう。
目次
インターナルマーケティングとは
インターナルマーケティングとは、企業の内部に焦点をあてたマーケティング手法です。このマーケティングでは従業員の要望を満たし、従業員満足度を向上させることで、顧客満足度や業務効率の向上に繋げます。
下記がインターナルマーケティングの例です。
- 住宅補助金を出し、従業員に会社から近い場所に住んでもらう
- フレックスタイム制度により、各従業員に合わせた働き方を実現
- バカンス休暇を導入し、従業員を緊張から解放しリラックスさせる
上記の他にも、様々なインターナルマーケティングの方法があります。これらを駆使する事により、会社全体の士気を高め利益の向上を目指します。
ただ、インターナルマーケティングの効果を最大限に発揮したいならば、サービスプロフィットチェーンについて理解しておかなければなりません。
インターナルマーケティングとサービスプロフィットチェーン
サービスプロフィットチェーンは、従業員満足度・顧客満足度・業績の3要素における因果関係を表しています。そして、この因果関係のうち1つでも欠けてしまうと、その他の2つの要素が悪化し、逆に1つでも向上するとその他の2つの要素が向上します。
サービスプロフィットチェーンは、1994年にマネジメント界では有名なヘスケットやサッサー達によって提唱され、今でも重宝されるフレームワークです。
サービスプロフィットチェーンの具体例は下記をご覧ください。
- インターナルマーケティングにより従業員満足度が向上
- 従業員満足度が向上し、従業員の仕事に対するモチベーションが向上
- モチベーション向上により接客や業務効率・新製品開発が好調に
- 従業員の働きが向上した結果、顧客満足度が向上
- 顧客満足度向上により、企業に対する顧客ロイヤルティが向上
- 顧客満足度が向上し、顧客の自社に対するファン化が起きる
- ファンを筆頭に、リピーターや自社を宣伝する消費者が増え業績アップに繋がる
この流れの中で、従業員は会社の製品サービスを作り上げる上で最初となる存在であるため、インターナルマーケティングを行う事が重視されています。
また、業績向上により増えた利益の一部を従業員へ昇給や賞与の形で与えることにより、さらに従業員満足度が向上し、正のサービスプロフィットチェーンの関係が出来上がります。
インターナルマーケティングの必要性
企業がビジネスにおいて利益を生むには、外部環境へマーケティングを行い顧客獲得する事が大事ですが、大前提として働き手となる従業員の存在が必要です。
仮に、従業員満足度が良くないと自社に必要な人材が他へ流れてしまう可能性が出てきます。また、従業員に過労を強いるばかりか、それに対する報酬が見合っていないと肉体的・精神的ストレスから業務効率が低下するでしょう。
サービスプロフィットチェーンとも関係しますが、一度負の循環が続くとそれを正の循環に戻すにはかなり苦労します。以上の理由から、インターナルマーケティングは企業経営において必要かつ重要な役割を果たしているのです。
インターナルマーケティングのメリット・デメリット
インターナルマーケティングはかなり魅力的なマーケティングです。しかし、メリットだけでなくデメリットにも注意して行わないと足元をすくわれるでしょう。ここでは、インターナルマーケティングのメリットとデメリットについて解説しています。
インターナルマーケティングのメリット
インターナルマーケティングはとても理にかなったマーケティングです。メリットを知ることにより、どのようなベクトルでこれを実践するべきかが見えてきます。しっかりと、メリットを押さえたインターナルマーケティングの施策に取り組みましょう。
1.売上の向上
サービスプロフィットチェーンでも見た通り、従業員満足度を向上させることは利益の向上に繋がります。
大企業に勤める従業員の給料は一定水準以上です。これは、売上が多い事以外にも待遇面における従業員満足度が高いため、他社に優秀な人材が流れないように高額に給料を設定しているインターナルマーケティングの印なのです。
まさに、サービスプロフィットチェーンにおける正の循環が形成されている一例ともいえるでしょう。
2.業務効率の向上
インターナルマーケティングにより、従業員満足度が向上する事で、業務効率も向上します。
従業員満足度は、給料だけでなく社内の雰囲気やワークスタイルも反映します。例えば、社内の雰囲気が良く、気軽に仕事のコミュニケーションを取れる場合、意思疎通がスムーズに行えるでしょう。
また、フレックスタイム制度を導入することで、各従業員が集中できる時間帯に仕事を出来るため、業務効率が一気に向上するのです。
3.会社全体の印象が向上する
インターナルマーケティングに取り組む事は、結果的に顧客ロイヤリティを向上させることにもつながる為、ブランドイメージの向上にも繋がります。
また、採用の場でも待遇が良いと従業員を良く思う会社だと思われ、応募人数が増える傾向にあります。人手不足に悩む経営者の方は、後半にて人手を集めるためのインターナルマーケティングを紹介しているので、ぜひご覧ください。
インターナルマーケティングのデメリット
インターナルマーケティングは、実施するタイミングを間違えると痛手を被る可能性があります。また、上手く機能させないと従業員満足度が逆に減少してしまいます。メリットだけでなくデメリットも把握したうえで、インターナルマーケティングを行いましょう。
1.間接的コストがかかる
前述の通り、インターナルマーケティングを行い従業員満足度が上昇すると、売上が上昇します。しかし、これは間接的もので具体的にインターナルマーケティングに費やした投資額がどのくらい利益増加に貢献したのかは完全には把握できません。
また、投資額を増やすと、売上は増えても利益が減少する可能性も出てくるでしょう。そのため、インターナルマーケティングを行う際には目標を定め、何のためにいくら投資するのかを考えるようにしましょう。
2.従業員満足度が上がらない場合がある。
インターナルマーケティングの根本は、従業員のニーズを汲み取り待遇に反映させる事により、従業員満足度を上げる事にあります。
つまり、適切なニーズを待遇に反映させないと従業員満足度が上がらない可能性があるのです。それどころか、余計な部分に投資をしていると思われ、従業員満足度が下がる可能性もあります。以下は、インターナルマーケティングとしては不適切なものだと言えるでしょう。
- 利用者が極端に少ない手当
- 自分の意思が反映されていない福利厚生
これらのデメリットを改善する為、最近では選択型福利厚生と呼ばれるカフェテリアプラン制度が出てきました。これは、従業員が会社から与えられたポイント(現金)を活用して自分の好きな用途でポイントを消費出来る福利厚生です。
インターナルマーケティングの導入方法
ここまでの解説でインターナルマーケティングについてだいぶ理解が深まったかと思われます。しかし、読者の中にはどうやって導入をしたら良いのか分からない人もいるでしょう。
この章では、そんな読者の方の為にインターナルマーケティングの導入方法について解説しています。
1.勤務制度に柔軟性を持たせる
勤務制度に時間を持たせる事は業務効率の向上に貢献します。
また、インターナルマーケティングのデメリットでも見た通り、従業員のニーズに合わない福利厚生を導入した場合、かえって従業員満足度が減少する可能性があります。
このデメリットを避け、業務効率を向上するためには、下記のように勤務制度に柔軟性を持たせることがおすすめです。
- フレックスタイム
- リモートワーク
- ノー残業デー
子育てが大変な子持ちの従業員や、感染症の危険性から電車に乗りたくない従業員など様々な心境の従業員がいます。このようなあまり直接言えないニーズに応えるためにも、匿名のアンケートを行うなどして、各々のニーズに合わせたインターナルマーケティングを行いましょう。
2.自社に関する魅力を従業員に伝える
従業員は、顧客に自社の製品サービスを受容してもらうためにセールスやマーケティングを行わなければなりません。その際、自社の製品サービスの魅力を従業員が理解していないと成約率が低下してしまいます。
そこで、自社の製品サービスの魅力を伝えることで、自信と誇りを持ち顧客にその価値をアピールできます。そのため、競合他社に勝る点や顧客の声を従業員に伝えて従業員ロイヤリティを高めることに努めましょう。
そうする事で、自然と顧客満足度が向上し、それが業績の向上に繋がるのです。特に、顧客の声は自社活動を直接反映しているため、改善のポイントやの強みを伸ばす事に繋ぐ接点としてとても貴重です。是非とも活用していきましょう。
3.SNSで企業アカウントを作成
企業アカウントの作成も従業員満足度が向上するポイントの1つです。自社に関する情報をSNSで発信する事で、ユーザーだけでなく従業員も自社ではどのような活動が現在行われているのかを意識する事が出来ます。
仮に、0からアカウント運用を始めたとしても、フォロワーが増えるにつれて自社の認知度や必要性を従業員が感じ、それが従業員満足度の向上に繋がります。フォロワーを獲得するには以下の事を意識して行いましょう。
- ハッシュタグの活用
- 自社の製品サービスのニーズがありそうな投稿にいいねする
特に、中小企業の経営者はこれに取り組むと良いでしょう。中小企業の課題の1つに知名度が挙げられます。そのため、SNSを活用し興味を惹く面白い投稿をすれば、会社の雰囲気や取り組みが分かりやすく従来よりも人材を集めやすくなるでしょう。
SNSを通じた採用を実施している企業も事実として存在するため、これを機に是非試してみてはいかがでしょうか。
4.社内研修セミナーの開催
企業が研修セミナーを開催する理由は、従業員の育成のため以外にもあります。従業員が成長できる環境を整え、一人前に育てることで従業員満足度を向上させるためにもあるのです。
近年の就活市場では、新卒社員が会社に成長できる環境を求める事が多くなりました。転職が当たり前の時代になりつつある日本において、この環境を求める新卒社員はとても多いです。
そのため、定期的に研修の開催や技術力を磨くために社外講師を招待するなどして従業員満足度の向上に努めましょう。ただ、無理に強いるようであればそれは逆効果になるので、希望制にするなどして様子を見る事をオススメします。
インターナルマーケティングの事例
インターナルマーケティングにより成功を収めた企業は多く存在します。ここでは、Googleとスターバックスの事例を用いて解説をしています。両社の共通点は、余裕を持たせたインターナルマーケティングです。それでは、早速見ていきましょう。
Googleの20%ルールにおけるインターナルマーケティング
Googleは20%ルールと呼ばれる文化を有しています。
20%ルールとは、与えられた仕事のうち20%までを普段とは異なる業務に取り組める制度です。
現代では主流のgmailやGoogleマップはこの制度により生み出されました。20%ルールの導入により、従業員は自分の好きなことに取り組め、心に余裕を持つことが出来ます。
これが、従業員満足度を向上させ業務効率も上昇するのです。会社により決められた仕事以外にも取り組めることで、可能性をつぶさずにビジネスの花を咲かせられます。
仕事は適度な休憩が必要です。あまりにも窮屈だと心のゆとりが無くなり、生産性も減少してしまいます。臨機応変に仕事を変更できる20%ルールの導入は、まさにインターナルマーケティングの成功事例と呼べるでしょう。
スターバックスのインターナルマーケティング
スターバックスは、接客マニュアルを敢えて作成していません。これは、従業員の自主性を尊重し、一人一人が好きな働き方を実現出来るために実施されています。
皆さんは、スターバックスを頼んだ時にメッセージや顔文字をコップに描いてもらった事は無いでしょうか。これは、マニュアルにあるのではなく従業員の自主性から生まれた顧客サービスです。
これは、従業員満足度が高まった結果、顧客サービスを向上させようと顧客サービスを自ら講じた典型例です。このことが顧客満足度に繋がり、リピートに繋がる事で業績が上がりサービスプロフィットチェーンが上手く回るのです。
もし、読者の中であまり従業員をルールで縛りたくないと考えている経営者の方がいるならば、一部の業務は自由に行っても良い制度を導入してみると良いでしょう。
インターナルマーケティングの失敗例
インターナルマーケティングは、従業員のニーズに沿って実施しないと意味がありません。例えば、従業員が希望もしていないのに自社製品の説明会を行ったり、リモートワークを導入する事が挙げられます。こういった事態を避けるため、匿名式のアンケートを取る等して従業員の希望をきちんと把握したうえでインターナルマーケティングを実施しましょう。
まとめ:インターナルマーケティングは目的が大切
インターナルマーケティングは、従業員満足度を向上させることで業績アップを狙う手法です。ただ、やり方を間違えると逆に従業員満足度が低下してしまう可能性もあります。
この事態を防ぐためにも、従業員に匿名式のアンケート実施や、選択型の福利厚生を設けるなどして対策しましょう。従業員にゆとりを持たせることを目的としたインターナルマーケティングを行っても良いでしょう。特に、中小企業の経営者の方はSNS活用などを筆頭に取り組む事で人材の確保に繋ぐことが出来ます。SNSアカウントの解説はすぐに出来るため、早めに取り組む事をオススメします。
加えて、利益を上げるためのマーケティングについて詳しく知りたい方はスイッチングコストの意味や事例をマーケティング視点で解説の記事も併せてご覧ください。