PEST分析とは?意味や進め方について事例を用いて分かりやすく解説

PEST分析 図

企業が成功するには、時代の流れに合わせた事業を展開していくことが必要です。そのため、自社の内部環境だけでなく外部環境にも目を向ける必要があります。そこで、企業が外部環境を分かりやすく捉えるためにPEST分析と呼ばれるフレームワークが存在します。このフレームワークでは、政治・経済・社会・技術の観点で外部環境を把握していきます。今回は、このPEST分析について事例を用いて分かりやすく解説していきます。

    目次

PEST分析とは

PEST分析とは、企業を取り巻くマクロ環境を分析するためのフレームワークです。PESTは、政治(Politics)・経済(Economy)・社会(Society)・技術(Technology)の頭文字を表しています。

この戦略は、事業の中長期的な戦略を立案する際に使用される事が多いです。企業の外部環境には多くの不確定要素が存在するため、出来るだけ広い範囲でビジネスの変化の可能性を捉える必要があります。そのため、企業はPESTの観点で外部環境を広く分析することで、ビジネス機会の発見やリスクの見落としを防ぎます。

外部環境のフレームワークの他には3C分析があります。
3C分析とは?顧客、自社、競合を把握する分析|やり方や事例を踏まえ分かりやすく解説の記事で詳しく解説しているので、この記事を読み終えた後にご覧ください。

Politics(政治)

ビジネスは政治や法律に大きな影響を受けます。政治領域における分析する際の具体的な指標は下記の通りです。

・税制度
・法律、法律改正
・規制、緩和
・条約、条例
・政権体制

上記の中でも、特に法律規制や税制度などは企業活動に制限を与え、大きな影響をもたらすため入念に調べる必要があります。最近では、緊急事態宣言に伴う飲食店の営業時間短縮要請が挙げられます。

しかし、逆に法律の規制緩和が進むと新たなビジネスの機会が現れます。医薬品などの規制産業は、規制や運用ルールが度々変更されます。2009年には施行された改正薬事法では、一部の医薬品のネット販売が規制されたことで、ネット販売専業の医薬品業者は大打撃を受けました。しかし、訴訟を契機に2014年にはネットでの販売が正式に認められるようになりました。これにより、多くの企業がネットでの医薬品販売の規模を拡大させてビジネスの機会を掴むことになりました。

このようにして、政治領域の分析を行う際にはリスクだけでなく、ビジネスの機会を発見する事にも着眼して取り組む必要があります。

Economy(経済)

外部環境分析において、景気動向や経済環境を分析することは定石ともいえます。経済領域における分析で具体的に着眼すべきポイントは下記のとおりです。

・景気動向
・GDP
・為替、金利、株価
・経済成長率
・消費動向
など

いつの時代でも重宝されるインフラや生活必需品の分野におけるビジネスは、景気の影響をそれほど受けません。しかし、娯楽やレジャーなどのビジネスは消費者の可処分所得が直接反映されるため、影響が大きいです。また、貿易業においては、為替相場などにより本来の仕入れ値よりも高く/低く商品を取引する事になる可能性があるため、特に注意が必要です。

Society(社会)

社会の観点では、社会を取り巻く環境や消費者のライフスタイルの現状と今後の変化を分析し、それが事業にどのような影響を与えるのかを見ていきます。社会領域を分析する際の具体的な指標は下記の取りです。

・人口動態
・世論
・環境問題
・文化的流行
・宗教
・教育
など

社会は概念が広く掴みどころがあまりありません。そのため、社会については大まかなトレンドを理解する事が大事になってきます。例えば、「消費者の環境に対する意識」や「女性の社会進出」といったトレンドは数年で急激に変化するものではありません。そのため、3~5年程度の間隔で大まかな変化を捉えていく必要があります。

人口動態は他の指標と比べると、具体性があり確実性の高い分析が可能です。出生率は短期間で劇的に変化する事は無く、人口構成は流行とは違いデータとして算出できるため、将来予測が外れることはあまりありません。また、人口動態はGDPに直結して労働市場に大きな影響を与えるため、外部環境を把握する時には重要な指標となります。

Technology(技術)

ITが目まぐるしいスピードで発展するこのご時世では、技術的動向を捉える事も大切になってきます。技術領域を分析する際の具体的な指標は下記の通りです。

・インフラ
・IT、IoT技術
・新技術
・特許
・イノベーション
など

近年では、マーケティングが非常に発展し新たにデジタルマーケティングの領域が注目されています。通信情報や個人の登録データを基にして最適な商品をレコメンドするなど、これまでは出来なかったビジネスが可能になりつつあります。その他、自動車業界ではガソリン車、ディーゼル車、ハイブリッド車など動力源別の多くの技術が乱立しています。将来的には、ガソリン車の規制が進んでいくため、自動車業界では電気自動車の開発技術を磨いていくことが予想されます。

PEST分析のポイント

PEST分析で見ていく外部環境は企業の外部の存在であるため、全てを細かく分析しようとすると非常に時間がかかってしまいます。また、IT業界であれば技術的分析は必須ですが、小売店であれば社会や経済の領域における分析の方が重要になってくるように、業界によって注目すべき外部環境の要素も変わってきます。

そのため、それぞれのビジネスによって影響を受けやすい要素や受けにくい要素を見極め、PEST分析をする必要があります。まずは、自社のビジネス特性を理解したうえで、PEST分析のうち重要となる指標を明確にして継続して分析を重ねていきましょう。

PEST分析の事例:富士フィルム

では、最後にPEST分析を用いて現存の大企業を分析していきます。ここでは、富士フィルムを事例に解説をしています。

デジタルカメラやスマートフォンによる写真が主流になる以前は、カメラと言えばフィルムカメラでした。しかし、デジタル技術(Technology)の発展と共にフィルムカメラ需要が衰退の傾向を見せ始めました。そこで、富士フィルムは写真を現像する際に使用される抗酸化技術を用いて、化粧品や医薬品業界に進出し、独自のコア技術を活かした多角化戦略に踏み切りました。また、社会(Society)で注目されていた再生医療事業で重宝されるコラーゲンと、フィルム加工におけるコラーゲン制御技術の親和性を発揮する事によって、多額の利益を上げてフィルム産業衰退の危機から脱して成功を収めたのです。

まとめ:ビジネス特性の理解と着眼すべき要素の見極めが大切

PEST分析は、自社を取り巻く外部環境を把握するうえで欠かせないフレームワークです。しかし、言い換えると自社の外側全てが該当する為、全てを把握しようとすると膨大な時間がかかるうえ、流動的な市場の変化に対応する事が出来ません。そのため、自社のビジネスの特性を理解したうえで、PESTのうちどれに着眼して分析を進めるのかを見極める事が必要です。そうすることで、富士フィルムのようにコア技術を活かした新たなビジネスを創出する事が可能になるかもしれないのです。

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