創発的戦略とは何か。ホンダの事例を踏まえて分かりやすく解説

創発的戦略 説明図

近年では経営の世界において、柔軟性やある程度の自由度は必要だと叫ばれる事が多くなっています。では、そのような柔軟性や経営組織に対してどのような正の影響を与えるのでしょうか。実は、このような柔軟な経営体制を取ることで、当初は意図しなかったヒット商品が生まれる可能性があるのです。今回は、そのような可能性を秘めた創発的戦略についてホンダの事例を用いて分かりやすく解説をしていきます。

    目次

創発的戦略とは

創発戦略とは、本来の経営計画や意図した戦略を実行している途中で起きた問題や出来事に対処する中で、後発的に形成される戦略を指します。営業を例に見ると分かりやすいです。当初はテレアポ営業を主軸に活動していた企業があるとします。しかし、飛び込み営業をしたところ、掴みが良かったため、飛び込み営業を織り交ぜた営業戦略にシフトした場合、これを創発的戦略と呼びます。

創発的戦略では、上司と部下のコミュニケーションが大切です。戦略の実行部隊である現場社員が、現場で予期せぬ問題に対処するため、上司と部下の円滑なコミュニケーションは必要なのです。

この戦略はイノベーションを生み出すためにも必要とされており、競合との差別化を図るうえでも重要視されています。今日の巨大企業であるホンダも創発的戦略により大成功を収めました。

イノベーションについては【最新版】破壊的イノベーションの意味や事例を分かりやすく解説の記事で紹介しています。この記事を読み終えた後にご覧ください。

創発的戦略を起こすための条件

創発的戦略を起こすにはいくつかの条件があります。また、それを有効にするか否かは経営組織の体制が重要になってきます。ここでは、創発的戦略が生まれるための条件を紹介していきます。

①リーダーシップとコミュニケーション

創発的戦略を有効に機能させるには、トップや事業責任者のコミットメントが必要です。現場に全てを任せきるのではなく、現場から出てきた課題や新たな知見をトップが吸収し、それを支援する事で創発的戦略は初めて真価を発揮します。また、適切なコミュニケーションをとることで、何故その戦略を実行するのかを現場と経営陣の間で深く理解できます。そうする事で、戦略の実行もスムーズに進み成功に繋がるのです。

②風通しの良い組織体制

上司と部下の円滑な現場からの意見を聞き入れなかったり、経営企画部の人間が幅を利かせる組織だと創発的戦略は生まれにくいです。創発的戦略では、上司と部下の適切なコミュニケーションにより戦略が改善されて生まれる事が多い為、従業員同士が信頼を置いて自由に発言できる風土が必要です。

創発的戦略のメリット・デメリット

経営戦略やマーケティングにおいて完璧なモノは存在しません。全ては一長一短であり、創発的戦略も例外ではありません。ここでは、創発的戦略のメリット・デメリットについて解説していきます。

創発的戦略のメリット

創発的戦略のメリットは柔軟性にあります。市場は絶えず変化するものであり、従来の市場の流れよりも現在の市場の流れの方が急速で、今後ますます加速度で気に変化していくものと予想されています。そのような流動性の高い市場では、当初予定していた経営戦略をスムースに実行できなかったり、実際に導入してみると他のやり方が合う場合も多々あります。このような問題にいち早く対応し、順応できる点が創発的戦略のメリットと言えます。

創発的戦略のデメリット

一方で、創発的戦略のデメリットは戦略の方向性が定まらなくなる可能性がある事です。創発的戦略は、当初予定していた経営戦略を実行する中で生じた問題を修正するうちに生まれる戦略です。そのため、目標を明確にせずあっちの方が良い。やっぱこっちのほうが良い。と、戦略を問題が生まれる都度変えていくと結局パッとしない戦略しか実行できずに全ての努力が無駄になってしまう事があります。こうしたことを防ぐために、何のために戦略を実行するのかを明確にしていく必要があります。

創発的戦略の事例:ホンダ

では、最後に創発的戦略についてホンダを事例に見ていきましょう。

ホンダは創発的戦略により成功を収めた事で有名です。ホンダはアメリカに進出する際に、ハーレーダビッドソンを筆頭とした大型バイク市場に対抗する形で新規参入をしました。しかし、大型のハーレーに比べるとホンダのバイクは低価格ではあったものの、性能や外見で劣りほどんど売れませんでした。そのような状況が重なると、現地の従業員が移動用に小型バイクを持ち込み、休日になると日頃のストレスを解消する目的で西海岸を走るようになりました。すると、それを見た現地のアメリカ人たちから「そのバイク自分も欲しい。」と声をかけられるようになり、小型バイクにもニーズがある事を突き止めました。

そこで、小型バイクの販売に舵を取り販売を進めたところ、小売りチェーン店から取り扱いの申し出が出てきて徐々に売り上げを伸ばすようになったのです。それが積み重なった結果、ホンダはアメリカの大型バイク市場から撤退し、小型車に焦点を当てた戦略を実行したのです。その結果、今日に至るまでの成功を収める事になりました。

この成功の裏には、ホンダの現地社員とその事業責任者間での適切なコミュニケーションと、現場の意見が積極的に受け入れられる風通しの良い組織体制があった事が挙げられます。今日では、ホンダは「ワイガヤ」と呼ばれる制度を導入しています。これは、役職や年齢、性別を気にすることなく気軽にワイワイガヤガヤする事を重んじた組織体制を指します。そうする事で、若手や現場の意見を積極採用し戦略に取り入れる事で創発的戦略をより良く実行できるように仕向けているのです。

まとめ:創発的戦略の成功には組織体制が重要

創発的戦略は、部下と上司の適切なコミュニケーションが非常に大切です。仮に、コミュニケーションに齟齬があったり、自由な発言が出来ない組織体制であると、現場の声が潰れてしまいます。そうすると、創発的戦略の根本が台無しになってしまうため、皆が居心地よく働ける環境を整備するのも経営陣の務めなのです。

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