ビジネスエコシステムとは?事例やポイントを踏まえて解説

ビジネスエコシステム

経営戦略の世界では、企業は持続的な競争優位を築くことが反映の秘訣であるとされています。しかし、近年になって「持続的な競争優位はあるのか」「持続的な競争優位は時代に応じてへんかするのでは」といった懐疑的な見解も見られるようになりました。そうした中で、自社だけでなく他社と連携して複数企業で競争優位を築く「ビジネスエコシステム」の考え方が登場しました。今回は、パートナー企業と協力して競争優位の構築を目指す「ビジネスエコシステム」について分かりやすく解説していきます。

    目次

ビジネスエコシステムとは

ビジネスエコシステムとは、ジェームス・ムーアによって提唱された理論であり、複数の企業や団体が連携して各々の強みや技術を活用して、業界の壁を越えて共に繁栄を築こうとする仕組みを指します。

ビジネスエコシステムを形成することで、1社では出来なかったビジネスが可能となり結果として消費者の便益工場に繋がります。そして、この成功を受けてさらに投資を増やしたり、新たにエコシステムに企業が参加する事で更に利益を増大する事が出来ます。

インターネットの普及が進むにつれて、マイクロソフト社はWindows上で使用するソフト開発を支援するために、開発ツールやAPIを提供する等しています。そうする事で、Windowsのサービスを向上させるために多くのアプリケーションが開発・提供され、ビジネスエコシステムに正の循環をもたらしているのです。

参考:MBA経営戦略 ダイヤモンド社

ビジネスエコシステムと従来の戦略論の違い

従来の戦略論とビジネスエコシステム

ビジネスエコシステムは従来の戦略論の考え方を一線を画しています。ここでは2つのポイントに分けてその違いを解説しています。

競争と協創の考え

従来の戦略論では、企業は業界内において同様の製品サービスを提供する会社よりもプレゼンスを向上させるために、様々なフレームワークを用いて自社単独で経営を行うのが当たり前でした。しかし、ビジネスエコシステムは協創を前提としたうえで競争するのが重視されています。競争のレベルを個々の企業ではなく、個々の企業の枠組みを超えたビジネスエコシステム(複数企業)間の競争と捉えています。

ゼロサム競争とウィン-ウィンの発想

これまでの戦略論は、如何にして他社からシェアを奪取しつつ新規顧客を取り入れるかが戦略の焦点となっていました。一方で、ビジネスエコシステムはウィン-ウィンの関係を重視し、ビジネスエコシステム発展のために参加企業が協力して利益を享受する考え方を重んじています。また、ウィン-ウィンの関係を構築する上で重要なのが、プラットフォームの仕組みです。プラットフォームが存在する事で、ビジネスの輪を拡大させより多くの消費者を囲い込むことが可能になります。代表的な例に、マイクロソフトやAppleが挙げられます。

ビジネスエコシステムが重視される理由

ビジネスエコシステムが重視される理由は、市場の流れが加速度的に変化するようになったことが挙げられます。これまでは、企業は漸進的に提供する製品サービスをアップグレードすれば自社の利益を確保出来ていました。しかし、ITの発展に伴い新たな技術や新興企業が続々と登場したことで、市場変化の流れが早くり企業もその対応に迅速に対応しなければなりません。その際に、自社だけでは対応できない技術や製品サービスの質向上のために足りない要素を補うために他社の協力を求めざるを得なくなったのです。

また、企業規模が大きくなればなるほど市場の変化に対応できないと損失が大きくなるため、彼らが新興市場や発展した市場における中核プレーヤーとなり様々な企業と協力関係を結ぶようになったのです。中核プレーヤーが大きい存在がビジネスエコシステムを調整し、お互いの健全な発展の為に様々なビジネスアイデアを創出するため、それに伴い多くの企業がビジネスエコシステムを重視するようになりました。

ビジネスエコシステムの成長を測る指標

ここまで読んだ読者の中には、ビジネスエコシステムのパフォーマンスをどのようにして測定すれば良いのか知りたい方もいるでしょう。そのような方向けに、この章ではハーバードビジネススクールの教授であるイアンシティらによって提唱された、3つの指標を紹介しています。

生産性(Productivity)

生産性は企業単独でも、エコシステム全体の連携においても重視される指標の1つです。ビジネスエコシステムにおける生産性は、技術などイノベーションに関する資源を低コストで新たな商品開発に繋げる力を意味します。代表的な指標として、ROIC(投下資本利益率)などが挙げられます。ビジネスエコシステムは、前提として多数の企業が参入して形成されるエコシステムのため、生産性が高ければ高いほど余剰資金も増え次につながる発展を支援できるのです。

たくましさ(Robustness)

ビジネスエコシステムは、複数企業で構成されるためイノベーションなどによる急激な競争環境の変化にも対応する必要があります。特に、企業連携によるネットワークが重視されているため、環境変化には的確かつ迅速にしなければなりません。仮に、対応できなければ他のエコシステムに先を越されシェアが下がり利益も低減してしまうでしょう。しかし、上手く対応できれば利益を維持あるいは更に増大する事が出来ます。たくましさを測る指標の1つに、エコシステム内のメンバー(企業)の生存率が挙げられます。

ニッチの創出(Niche Creation)

ビジネスエコシステムでは、有意義な多様性を重視しています。つまり、ビジネスエコシステム内における新たな役割を担うニッチ企業が継続して誕生する事が求められています。ニッチ企業が生まれる事で、新たなビジネスの機会や多様性が生まれ、健全な発展が後押しされるのです。これを測る指標には、新規企業の数や新製品や新技術の採用数が挙げられます。

エコシステム発展のカギ:キーストーン企業

キーストーン企業とは、ビジネスエコシステムの中核プレーヤーであり、ビジネスエコシステムの発展に大きな影響を与えます。前述したマイクロソフトやAppleなどがキーストーン企業の例として挙げられます。

キーストーン企業の提供するプラットフォームにより、ビジネスエコシステム内の企業は効率的なビジネス展開が可能になり、エコシステム全体の生産性が高まります。そして、キーストーン企業がイノベーションを積極的に起こす事により、多くのニッチが創出されたくましさが現れます。先述した企業は、キーストーン企業としての役割を確実に果たし、健全な発展に大きく貢献しました。

反対に、キーストーン企業としての自覚を忘れ、自社の立場を誇示して身勝手なビジネス展開をすればビジネスエコシステムは衰退してしまうでしょう。かつて、アメリカの巨大な総合エネルギー会社であったエンロンは、キーストーン企業として活躍していましたが、巨額の粉飾決算が発覚し倒産にまで追い込まれてしまいました。

ビジネスエコシステムは、参加企業の立ち回り方次第でパートナー企業のビジネスを大きく左右するため、キーストーン企業だけでなく個々の企業が自覚を持った経営を行わなければなりません。

ビジネスエコシステムの事例

ビジネスエコシステムについて理解できたものの、どのような企業が該当するかピンと来ない方もいるのではないでしょうか。実は、私たちが利用する身近なサービスも、ビジネスエコシステムのおかげで成り立っています。それでは、3社の事例を基にビジネスエコシステムについての理解を深めていきましょう。

最後に、ビジネスエコシステムの事例を3つ紹介します。

ビジネスエコシステムの事例:マイクロソフト

マイクロソフトは、消費者生活を豊かにするだけでなく多くの企業にビジネスソリューションを提供しています。同社は、AIの機械学習やWindows上で使用するためのアプリケーション開発支援を先導して行っています。Windows上で提供するソフトウェア開発を支援する事で、消費者の便益を高め他のビジネスエコシステムへの流入を防ぎつつ新規顧客を獲得しています。最近では、自動車会社とも協力してAIによる自動運転の技術開発にも大きく貢献しています。

ビジネスエコシステムの事例:Apple

Appleと言えばiPhoneをイメージする方も多いでしょう。iPhoneの機能を分解すると「カメラ」「ディスプレイ」「通信技術」「半導体」など様々な機能があります。この各機能のアップグレードはAppleだけでなく、世界中の会社が協力して行っているのです。iPhoneが人気を博し新たなイノベーションを起こし、生活者の便益を向上し続ける限りAppleを中心としたビジネスエコシステムは繁栄し続けるでしょう。また、iPhoneだけでなくMacBookも同様に、製造のためには様々な企業が関わっています。このことから、Appleはキーストーン企業としての役割を確実に果たしていると言えるでしょう。

ビジネスエコシステムの事例;Google

Googleは検索エンジンを始めとして、様々なクラウドサービスを提供しています。Google広告では、広告効果を向上させるために多くのアドテクノロジー会社が協力してサービスの質を向上させています。また、Payサービスの開発も行い、オンライン決済に必要な技術を有している企業と協力してサービスを提供する等して、中核プレーヤーの役割を担っています。

まとめ

経営戦略の考えの中心である競争優位は、時代が進むにつれて多様化されています。競争優位性の持続性や範囲もイノベーションの影響により大きく変わっています。しかし、どの時代にも共通して言えることは時代の変化に対応する事の大切さです。企業の未来像を考えた上で、ビジネスエコシステムに参加するのか否か、もしくはビジネスエコシステム内でどのような立ち位置でビジネスを展開するのかをきちんと見極めて健全な発展を目指す事が企業には求められているのかもしれません。

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