事業ドメインとは|意味や決め方について事例を用いて分かりやすく解説

事業ドメイン 図

企業が安定して収益を確保するには、自社の強みを発揮する場である事業ドメインを確立する必要があります。これは、企業が市場において優位性を構築するうえでも欠かせません。しかし、どのようにして事業ドメインを確立したら良いのか分からない方も多いと思われます。というわけで、今回は事業ドメインの意味や決め方を、事例を用いて分かりやすく解説していきます。

事業ドメインとは

事業ドメインは、企業が収益を安定して確保するうえで設定しておくべきとても重要なものです。ここでは、事業ドメインとは何かを意味や必要性、注意点の観点から解説しています。

事業ドメインの意味

事業ドメインとは、企業が事業を展開する領域であり、全社戦略の前提つまり主力事業の前提にもなる事を意味します。企業は、事業ドメインを設定しそこに注力して経営資源を投下する事で、余分な事業にリソースを割かずに済みます。そのため、自社の強みが明確になり効果的に事業を進める事が出来、安定した収益の確保が可能になるのです。

事業ドメインは何故重要なのか

事業ドメインは、会社の主力事業を把握し、そこに貴重な経営資源を集中するために必要となります。もし、事業ドメインが確立されていないと、貴重な経営資源の過剰投入や、不必要な事業への多角化により経営のバランスが保てないなどの危機が生じてしまいます。

逆に、適切な事業ドメインを設定出来れば、主力事業を業界屈指のものへと成長させ、親和性の高い事業へ多角化する事が可能となります。そうする事で、企業は安定した収益を確保する事が可能となるのです。

適切な事業ドメインの大きさはどれくらい

事業ドメインの大小

事業ドメインは小さすぎても大きすぎてもいけません。ここでは、事業ドメインを小さく設定した場合と大きく設定した場合のそれぞれのデメリットについて解説していきます。

事業ドメインが小さすぎる場合

事業ドメインが小さいと様々なデメリットが存在します。ここでは、成長と採用の観点からそのデメリットを解説しています。

成長の限界

事業ドメインをあまりにも小さく設定しまうと、すぐに成長の幅に伸び悩み、本来よりも低い収益しかあげられなくなる可能性があります。Amazonを例に見てみましょう。Amazonの事業ドメインを仮に「ネット書店」と定義していたら、今日のようなAmazon経済圏を築きあげるまでの発展は無かったでしょう。

優秀な人材の不足

事業ドメインは、企業がビジネスを展開する主戦場となります。そのため、事業ドメインが小さくすぐに実現できるようなものだと、それに魅了される人も少なく人手集めに苦労します。「日本一を目指すモノづくり企業」と「世界一を目指すモノづくり企業」のどちらに入りたいかと言われたら、可能性が無限大の後者に優秀な人材が集まることは当然の事だと言えるでしょう。

事業ドメインは大きすぎる場合

事業ドメインが小さすぎると駄目だからと言って、事業ドメインを膨大な大きさに設定すれば良いと思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、事業ドメインが大きすぎても問題が生じてくるのです。下記では、その問題3つを紹介しています。

強みが通用しなくなる

事業ドメインを大きくしすぎると、それだけ競合が増える可能性も高まります。こうなると当然、その業界のリーダー企業やチャレンジャー企業などと競わなければなりません。すると、1つの事業に注力していた方が強みを発揮出来ていたのが、事業ドメインを拡大したが故に必要な経営資源が多くなり、その強みが通用しなくなるリスクが生じます。

組織の求心力が失われる

企業には本来、核となる企業理念やミッションが存在し、それが複数事業部間の従業員を結びつける働きをしています。しかし、事業ドメインがあまりにも拡大されると各ドメインで異なる文化やコミュニティが生まれ、従業員が1つの束ではなく複数の束で会社を回しているようになります。これが従業員のマインドに影響を及ぼし、会社全体での一体感が薄れてしまう事に繋がるのです。

グループマネジメントの難化

当然ですが、各事業部で求められる人材や風土は異なり、その事業部にはそれぞれ責任者や事業部ごとのKSF(Key Success Factor:成功への鍵)が存在します。そして事業ドメインを有効なものにするためには、各事業部で競争優位を築き、それをグループ全体で統括する事が求められるのです。もし、事業ドメインがあまりにも広くなってしまうと、投資する経営資源が分散されてしまうため、全体がパッとしない事態が起こってしまいます。

適切な事業ドメインを設定するには自問し続ける事

事業ドメインの設定は小さすぎても大きすぎてもいけません。しかし、ドメインの設定に際して適切なサイズを規定するための測定方法は存在しません。そのため、「現状の事業ドメインのサイズは適切か」を自問して常にドメインを見直していく必要があるのです。

事業ドメイン設定に際してのポイント

ここまでの解説を通して、事業ドメインの設定は非常に難しいと思われた方もいらっしゃるかもしれません。そこで、そのような方向けに事業ドメインを設定するうえで見るべきポイントについてここで解説しておきます。

コア・コンピタンスの把握

コア・コンピタンスとは、その名の通り企業の中核となる強みを指します。ゲイリー氏とプラハラード氏によると、「顧客に対して、他社には真似のできない自社ならではの価値を提供する、企業の中核的な力」として定義づけられています。

コア・コンピタンスは企業の主力事業を決定づける事業ドメインと密接に関わりがあるため、しっかりと把握しておきましょう。これを把握する事で、競争優位性を保ったまま事業を多角化する事が可能になります。

競争優位性を構築した事業を展開するためのフレームワークは、【図解】アドバンテージマトリクスとは?4つの事業型と業界分析を事例を用いて解説の記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

ケイパビリティの把握

ケイパビリティは組織としての能力や強みを意味します。コア・コンピタンスは技術開発などにおける事業上での強み、ケイパビリティは組織能力としての強みを表す点に違いがあります。

ケイパビリティを考える事で、経営資源である人がどのようにして連携しているのかを理解するなど、企業の内部環境を分析し「組織能力」の引き上げに繋げることが出来ます。具体的には生産能力や業務遂行能力が挙げられます。

これらの能力を高める事により、外部環境の変化に柔軟に対処する事が可能になります。

競争優位性を築ける市場の選択

事業を成功させるためには、競合との差別化を図り競争優位性を構築する事が必要不可欠です。

そのためには、進出先の市場の競争状態などを把握する必要があります。また、競争が過熱でなくでも成長市場でなければ早期撤退が見込まれるため、意味がありません。そのため、成長市場かつ差別化を十分に図れる市場を選択する事が望ましいです。

競争優位性の構築を助けるフレームワークについて、STP分析とは?意味や分析方法をスターバックスの事例を交えて分かりやすく解説の記事紹介していますので、この記事を読み終えた後にご覧ください。

新たな市場を見つけるためのフレームワークはブルーオーシャン戦略の意味や事例を戦略キャンバスを交えて解説の記事で解説していますので是非一読を。

事業ドメインの決め方:CFT分析

ここまで、事業ドメインの設定における注意点や前段階のステップについて説明しました。次では、自社に最適な事業ドメインを決めるために有効なフレームワークである、CFT分析について解説していきます。

CFT分析とは

CFT分析では、自社の強みを活かせる「顧客(Customer)」「機能(Function)」「技術(Technology)」の3軸の観点から、「誰に」「何を」「どうやって」提供するのかを分析します。

Customer:顧客

自社の強みを活かせる顧客を見つけるには、自社の提供する製品が「誰」を対象とするのかという観点から、属性ごとに消費者を分類しターゲット層を選定します。その際の分類の指標となるのは下記の通りです。

・性年代
・居住地域
・職業
・嗜好性
など

これらの指標を基にして自社の強みを発揮した製品を、特定の需要がある層に向けて提供する事を目標にする事で、事業ドメインの設定に役立ちます。

Function:機能

機能軸の決定は、自社の提供製品が顧客にどのような価値を提供するのかを規定します。この考えは、大企業が競争優位を保ち続けるうえで大切になる持続的イノベーションにも繋がります。機能軸を強化する事で、従来よりもより高機能な製品を実現し、優良顧客の獲得にも寄与するため、事業ドメインの設定に大きな影響を及ぼします。

イノベーションに関する記事は【最新版】破壊的イノベーションと持続的イノベーションの意味や事例を徹底解説の記事をご覧ください。

Technology:技術

技術軸を考える事で、競合他社には無い自社独自の強みを特定する事が出来ます。他社とは一線を画した技術を活用する事で、場合によっては寡占市場で一人勝ちを収めることにもつながるのです。また、その技術を応用してさらなる事業の多角化を図る事も可能になります。

CFT分析において、技術軸はコア・コンピタンスの考えと通ずるものがあります。

事業ドメインの企業事例

ここまで、事業ドメインについて意味やポイントを踏まえながら解説してきました。CFT分析も交えた事でより理解が深まったかと思われます。ここでは、さらに解像度を上げるために事業ドメインの事例を紹介しています。

1.セブンイレブン

コンビニ業界最大手のセブイレブンの事業ドメインは「流通を核に周辺事業を巻き込んだ消費者向けサービス」と定義できます。この事業ドメインを中心として、地域に集中して店を出す「ドミナント戦略」を展開する事で、競合にも負けず劣らずのシェアを獲得しています。加えて、周辺事業ではセブン銀行などの金融事業にも取り組む事で、消費者の身近にあるサービスを提供していると言えるでしょう。

2.コダック

コダックは事業ドメインを狭くしてしまったが故に倒産した失敗例として挙げています。かつて、コダックはカメラフィルム産業における世界最大規模のアメリカの会社でした。しかし、デジタルカメラの普及により自社の市場シェアが低下し主力商品の力を失い、事業の衰退と共に倒産してしまいました。このことから分かる通り、コダックは事業ドメインをカメラフィルムという狭義の分野に設定していたため、デジタル化の対応が遅れたのです。

まとめ:目的を見失わない事業ドメインの設定が大事

事業ドメインは、設定するサイズを見誤ると経営状態が傾いた時に対処できないなどの問題が発生します。逆に、適切な事業ドメインを設定する事により、その事業を中心にビジネスの機会が舞い込み安定した収益の確保に繋がります。これを達成する為には、自社の提供する製品の価値を誰に・何を・どのように届けるのかを考える事が大切になってくるのです。つまり、目的を明確にした事業ドメインの設定が重要だといえるでしょう。

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