範囲の経済とは??成功事例と失敗事例を交えて分かりやすく解説

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今回の記事はビジネスマン・経済学を学んでいる人は一度は耳にしたことがあるだろう「範囲の経済」について成功事例を交えながら解説をしていきます。

将来起業したい、効率良く事業拡大をしたいといった方は必見です!

この範囲の経済は企業活動が順調な時のみに考えるものではありません。

事業が行き詰まり、事業転換の必要性が迫られたときにも必須のモノとなるので起業したい方や経営者の方は一読の価値アリです。

この記事を読み終わる頃には

ただ単純に事業拡大を図るだけではビジネスは成り立たない

ということが良く分かると思います。

それでは、解説に移りましょう!

    目次

範囲の経済とは??

範囲の経済は経営学用語です。企業が生産量を増加させたり事業を多角化した場合には、一製品や一事業あたりのコストを削減できる考え方を指します。

簡単にいうと、企業活動を行う上で

異なる事業を展開する際に共通の経営資源(リソース)を共有しコスト削減を図る事です。

シンプルな例を挙げてみましょう

木材加工業者による木製家具の新事業展開

この場合、元々木材加工を売りとしていた業者が独自の木材加工技術ノウハウや職人などいった経営資源を木製家具事業に応用して販売する事で、外部から木材加工のスペシャリストの引き抜きや新たな職人育成をせずに事業展開を行えますよね。

以上が簡単な範囲の経済の解説です

こちらは良く規模の経済と混同されがちですが

規模の経済は生産規模の増加によるコスト削減

範囲の経済は経営資源の共有によるコスト削減

を指すので覚えておきましょう

もしこの時に木材ではなくプラスチック製の家具を販売したとすると、プラスチック加工のノウハウや職人育成を1から10まで行わなければならないため、相当なコストがかかる事は周知の事実でしょう。

それだけではありません。

今まで手を付けたことの無いプラスチック産業に進出するわけですから取引先及び販路の確保といった新たな集客方法も考えなければならないのです。以上を踏まえると改めて規模の経済を踏まえた上での事業展開がどれだけ重要なモノなのかを少しはご理解いただけたのではないでしょうか??

範囲の経済を理解しているか否かでは事業の行く先や企業活動の方向性は180°変わってくると言っても過言ではないでしょう。だからこそ、この語句を捉える事は大事なんです。

ただ、範囲の経済を利かすと言っても様々な角度からのアプローチが存在します。

ここまでを加味したうえで早速、以下で範囲の経済を活用した事業展開による成功事例をみてみましょう

範囲の経済による成功事例3選

ここではまさに代表格ともいえる

範囲の経済を活用したことで市場シェアを獲得した事例3つご紹介

富士フィルム

Amazon

セブン銀行

富士フィルム

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範囲の経済における成功事例の鉄板といえば富士フィルム

当時、富士フィルムはフィルム事業を主軸としてカメラ産業を牽引していたわけですが、テクノロジーの発達と共にそのシェアはデジカメに奪われていく一方でした。

また、この頃は銀塩フィルムの競合他社コダックとの競争も激しく富士フィルムの企業活動に陰りが見えていました。

そこで、同社はフィルム制作を支えるコア技術である「ナノテクノロジー」の「抗酸化技術」を応用して化粧品「アスタリフト」を開発。

この抗酸化技術は撮影したフィルム写真が色あせないようにするための富士フィルム屈指の技術であったわけですが、これを肌の酸化による老化を止める事に応用して開発させたわけであります。

その他、フィルム技術をTVの液晶フィルムに応用したり、オフィスプリンターといった複合機製品を製造するなどして一気に多角化戦略を進めていったわけです。

結果は勿論大成功し、競合他社であるコダックは事業転換に失敗し2012年に経営破綻してしまいました。

Amazon

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皆さん御馴染みの超ビック企業

創業してから30年満たないにも関わらず既に20ヵ国以上の国々に世界展開している物凄い会社。あのAmazonが成功した理由の背景にも範囲の経済が存在します。

AmazonのECサイトを利用された方なら分かるとは思いますが

注文した商品が届くまでが驚くほど早い。

この裏にはきちんとした理由があるのです。

Amazon経済圏という言葉をご存知でしょうか??

この言葉は、同社の提供するサービスの豊富さが由来しています。アマゾンはプライムビデオやAlexaを導入することにより、消費者の生活価値を向上させることを図っています。

既に範囲の経済が効いている匂いがプンプンしますが、これだけではありません。

同社は元々インターネット上で本のみを販売しているECサイトを運営しているちっぽけな会社でした。しかし、当時の経営陣がネット市場の拡大を見据えたうえでありとあらゆる商品をEC上で購入できるシステムを構築した他、自社で倉庫を構え迅速に商品を手配できるようにしたのです。

これにより、既存の物流ノウハウ(経営資源)を応用し事業展開を図る事で規模の経済を働かせGAFAと呼ばれる世界的超企業にまで上り詰めたわけなんです。

セブン銀行

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国内最大手コンビニチェーンであるセブン&アイ・ホールディングスの提供している「セブン銀行」実は、この金融事業だけで同社は2020年3月期に1202億円の経常収益を叩き出しているんです。既に「赤の銀行」「緑の銀行」「青の銀行」と金融界にはレジェンド企業がいる中で何故これだけの収益を上げる事が出来たのでしょうか。その裏には勿論、範囲の経済が隠れているのです。

昨今、働き方改革で騒がれているコンビニ業界の24時間営業についてですが、この24時間営業に同社は着目して範囲の経済を働かせていきました。前回の記事でも記載した通り、セブンイレブンはドミナント戦略により規模の経済を効かせることに成功しました。

同社は規模の経済を働かせたお陰でセブンイレブンは全国いたるところに散見されるわけです。このどこにでもある店舗と24時間営業のセブンイレブンの強みを活かしてATMを設置する事で、消費者が24時間いつでもATM取引を行うことを可能にしたわけです。実に素晴らしい。。

範囲の不経済

ここまでは規模の経済によるメリットを解説してきましたが、当然適切な事業展開をしていかなければビジネスの成功はありません。ここでは範囲の経済とは真逆の意味を持つ範囲の不経済を見ていきます。

「範囲の不経済」とは同時展開している事業同士が互いの事業の足かせとなり利潤活動の効率を低減させることを指します。

簡単に例を挙げて解説をします。

飲料水の製造に特化したA社と製菓の製造に特化したB社がM&Aにより合併したとしましょう。さらに、A社は1時間で1000個の飲料水を、B社は1時間で1000個の製菓を製造できたとします。

本来であれば、合併後に1時間で製造される飲料水・製菓の総数は2000個となるわけですが、たいていの場合は2000個を下回ります

この場合の原因は多様で

・従業員が新しい職場環境になれていない

・合併した分新たな事業を展開したため製造に対するリソースが割けない

・適切なノウハウの共有が事業間で行えていない

といった事が挙げられます。

規模の不経済事例~ユニクロ野菜~

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低価格で良質な製品を大量生産する事が売りのユニクロ。実は、過去に一度食品事業に進出した結果、大失敗に終わったことがあるのです。この背景にあるのが規模の不経済。以下で、その失敗原因について見ていきましょう。

2002年、ファーストリテイリング社は生野菜の生産及び販売を行う「SKIP」と呼ばれる事業を開始しました。この理由には、アパレルの生産過程であらゆる無駄を排除し低価格で商品を提供してきた同社のノウハウを食品分野で共有し、生野菜の生産から販売までの無駄を排除しようとした試みがありました。

そうしてSKIP事業に取り組み始めた矢先、異業種間での無駄の排除ノウハウは通用するはずもなく一気に赤字事業になってしまったのです。

このように、異業種間でのノウハウの共有は失敗に終わることが多く事前準備に相当な時間を費やすことが求められています。当たり前ですが、何事も始める際には準備に手間をかけて取り組むことを意識しましょう。

まとめ~関連ある事業展開を~

ビジネスを拡大するうえで闇雲に事業展開するだけではうまくいきません。ビジネスにおいて範囲の経済は要となる存在です。また、ユニクロの事例からも見て分かるようにどの分野で範囲の経済性を効かせるのかを深く考えないと大きな損失を生む可能性もあります。既存事業とのシナジー効果をしっかりと加味したうえで事業拡大をするようにしましょう。

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