ブランドエクイティとは?事例や評価方法を踏まえて意味を解説

ブランドエクイティ

近年、ブランドを重視したマーケティングが重視されています。「ブランド戦略」を始めとして最近では「ブランド戦略部門」などの新規部門も登場しています。

では、ブランドを重んじたマーケティングを行う中で、企業はどのポイントを重視してブランドを構築すれば良いのでしょうか。この記事では、そのような悩みを持つ方向けにブランドエクイティについて解説しています。

    目次

ブランドエクイティとは

ブランドエクイティとは、ブランドの持つ資産価値を示しブランドそのものの力を表します。消費者はブランドの有無や優劣に基づいて商品を受容すると考え、ブランドを名前やマークとしてではなく「資産」として評価する考え方に基づいています。カルフォルニア大学バークレー校のデイビッド・A・アーカー(David A. Aaker)教授は、ブランドエクイティには下記の5つの要素が存在すると提唱しました。

  • ブランド認知(ブランドの認知度)
  • 知覚品質(ブランドの品質)
  • ブランドロイヤリティ(ブランドへの忠誠心)
  • ブランド連想(ブランドイメージ)
  • その他のブランド資産(特許、商標、著作権など)

通常、資産と聞くとプラスのイメージを抱くかもしれませんが、ブランドエクイティでは負債も含めたマイナスな資産も評価項目に該当します。つまり、上記であげた5つの要素がどれもマイナスだった場合、消費者からは価値の低いブランドとして認識されてしまうでしょう。

そ企業はブランドエクイティに含まれる5つの要素を総合的に向上させることが求められます。当然、ブランド認知が高ければ高いほど良いに越したことはありません。しかし、ブランド認知が高いが品質が悪かったり、不祥事続きだと消費者からの評価はマイナスになってしまうでしょう。そのため、企業はブランドとしての価値を高めるために前述した5つの要素の価値を総合的に高める必要があるのです。

ブランドエクイティの構成要素

ブランドエクイティ 構成要素

前述した通り、ブランドエクイティには5つの構成要素があります。「ブランド認知」「知覚品質」「ブランドロイヤリティ」「ブランド連想」「その他ブランド資産」の5つの要素を加味して企業は自社ブランドの価値を高めなければなりません。この章では、皆様がそれぞれの要素について理解できるように5つの要素を分かりやすく解説しています。

ブランド認知

ブランド認知とは、文字通りブランドの認知度合いを表します。消費者はよほどの冒険心が無い限り、自分の知っているブランドの商品を購入します。ここでいう認知の対象は、単にブランドの名前やロゴの知名度だけでなく、そのブランドをどれ程知っているかも含まれます。

一般に、ブランド認知が高ければ高いほど消費者から安心・信頼され購買に繋がる可能性も高まる為、ブランド認知を向上させることは重要であると言えるでしょう。

知覚品質

知覚品質とは、消費者がブランドに対して感じる品質を指します。そのため、注意しておくべき点として、品質は企業ではなく消費者が感じるものである事が挙げられます。つまり、企業がどれだけ企業が品質の良い素材で商品を提供したとしても、消費者がそれよりも品質の低い他社製品の方を、品質が高いと判断したら消費者は他社へ流れてしまうでしょう。知覚品質は、消費者が商品を一度購入するか、購入を真剣に考える事で形成されます。この経験を通じて、次に紹介するブランドロイヤリティが構築されるか否かが決定されるのです。

知覚品質に関わる要素の例として、下記の要素が挙げあられます。

  • パフォーマンス(携帯なら通信速度や容量など)
  • 付加機能(靴の防水機能など)
  • 信頼性(故障や不良品の少なさなど)
  • 耐久性(強度など)
  • 付加サービス(保障やアフターサービスなど)

知覚品質の価値を上昇させたい場合には、上記の要素を1つずつ向上させることを目標に取り組むと良いでしょう。

ブランドロイヤリティ

ブランドロイヤリティはブランドへの愛着心を表します。つまり、ブランドロイヤリティの高い顧客ほどそのブランドの商品を継続的購入する可能性が高まるため、ブランドロイヤリティの高い顧客を多く生み出せれば企業の収益性は安定します。しかし、リピート率が高いからと言ってブランドロイヤリティが高いと判断するのは良くありません。何故なら、周辺地域に競合がいないから仕方なくリピートをしているだけの消費者もいる可能性があるからです。

ブランドエクイティにおけるブランドロイヤリティとは、顧客が積極的に特定ブランドを継続購入したいと思っている状況を表しているのです。このような顧客は、企業に安定的な収益をもたらすだけでなく、ブランドに対する強い意見も持っているため、ブランド戦略においてブランドロイヤリティの向上は特に重要視されています。

ブランド連想

ブランド連想は、消費者がブランドに対して抱くイメージを表します。これまでに紹介したブランドエクイティがブランドに対する興味・関心の深さであったのに対して、ブランド連想はブランドの範囲を規定する考え方を持ちます。

例えば、VuittonやRolexのような高級ブランドは「ステータス」「お金持ち」の象徴であるというブランド連想を抱く人が多いでしょう。しかし、これらのブランドが低価格でアウトレットモールに出品されると、ブランドとしての価値を落としてしまいかねません。消費者の抱くブランドイメージの範囲を、想像を超えて下回る場合はブランドの毀損を引き起こす可能性があるのです。

そのため、商品企画や経営戦略において消費者の理解できるブランド連想の範囲内で、ビジネスを展開する事が求められます。

その他ブランド資産

特許や商標、著作権などもブランド資産として重宝されます。特に、特許に関してはそれだけで競争優位性を確立できる程の威力を有する場合もあるので、十分ブランド資産と言えるでしょう。

商標登録は日本ではまだ理解が浅いですが、海外では重要視されています。最近では、Meta(旧Facebook社)の新たなロゴが日本のベンチャー企業のロゴと激似である事が話題になりました。しかし、Metaに先立って商標登録をしていなかったため、先にそのロゴを使用していたベンチャー企業が使用できなくなる可能性も示唆されています。

上記の例からも、商標も重要なブランド資産として捉えられるため、特許や商標のような権利関係には細心の注意を払うようにしておきましょう。

ブランドエクイティの評価方法

ブランドをマネジメントする上で、上記で説明したブランド資産になりうる5つの要素を評価し、定期的に比較していくことが重要です。また、自社のブランドエクイティの価値を知ることで、М&Aの買収価格の評価やブランドライセンス料も知ることが出来ます。その他、ブランドマネジメントにおける投資効率の評価や、足りていない部分を洗い出せ、経営に関わる様々な目的で利用されています。

ブランドエクイティを評価する方法は多数ありますが、ここではインテージ社の提供する評価方法を3つ紹介しておきます。

1.財務会計的な測定
仮に企業同士でブランド名を売買するとしたら、当然その価格を決めなければいけません。この面からアプローチした測定方法です。
2.構成要素別の測定
エクイティを構成している、消費者の知識、イメージ、評価といった要素に分解して、実際の調査でそれぞれの大きさをとらえ、それらを総合する方法です。
3.モデルのパラメータ
消費者のブランド選択を説明する数学モデルのなかで、ブランドエクイティを一つの変数またはパラメータとして組み込みます。モデル解析を通して、その値を求めます。

これら3つ簡単に表すと、「企業の時価総額や資本金など財務情報から見る測定」「消費者調査のデータを用いたブランドエクイティの測定」「購買に関わるブランドエクイティの割合の測定」となります。

それぞれの測定方法を目的に合わせて測定する事で、ブランドエクイティの客観的な価値判断が可能になります。

ブランドエクイティの成功事例

さらにブランドエクイティに対する理解を鮮明にするためにブランドエクイティの成功事例について解説しています。ここでは、「星野リゾート」と「スターバックス」の成功事例を紹介しています。

星野リゾートの事例

星野リゾートの運営する星のやは「独創的なテーマで圧倒的非日常へいざなうブランド」をテーマに、リゾートに訪れる顧客に圧倒的な非日常の体験を提供しています。

非日常を演出するために、客室にはテレビや時計を置かないなどコンセプト作りに徹底してこだわっています。また、顧客の行動から得た気付きを集計して、サービスの向上に活かして顧客満足度を上げてリピーターを確保する事にも成功しています。

加えて、コンセプトを現場の従業員に決めてもらう事で、顧客満足度を向上させる方法を社員が自由に考えて行動できるため、顧客だけでなく従業員満足度も向上する正の循環が回っています。

参考:星野リゾートのブランディングから学ぶ!〜理論の実践とは〜 | BRANDINGLAB – ブランディングラボ

スターバックスの事例

スターバックスは競合がコーヒーの品質で競い合う中「サードプレイス」と呼ばれる、第3の空間を提供する事で他には無いブランドエクイティを確立し、成功しました。

これまでのコーヒーチェーン店は上質なコーヒーは勿論の事、「サードプレイス」として居心地が良くリラックスできる空間も提供しています。今では47都道府県すべてに店舗を構えるスターバックスですが、実はフランチャイズを採用せず、全ての店舗を直営店として展開し、ブランドイメージの統一を実現したのです。

また、スターバックスは期間限定のフラペチーノを販売する等して、ロイヤリティの高いブランドを演出するのが上手です。期間限定で販売し、広告をあまり出さずにSNSで告知する事により、ファンを上手く囲い込み独自のブランドイメージを構築する事に成功しています。

参考:スターバックスのブランディング戦略について調査|キャククル

まとめ

ブランドエクイティは、企業がブランドを構築する上で重要な要素です。構築のためには、長い時間がかかりますが他社と差別化し独自性を見出すには、ブランドエクイティを重視したマーケティング活動が必要不可欠です。

自社の目指す方向性とブランドエクイティを照らし合わせながら、まずはしっかりと各要素を磨き上げる事を目標に取り組むようにしましょう。

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